2002 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエにおけるキノコ体発生機構の分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
01J09682
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
来栖 光彦 筑波大学, 生物科学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | ショウジョウバエ / 脳 / 神経発生 / キノコ体 / 神経幹細胞 / 分裂 |
Research Abstract |
キノコ体は、節足動物の脳に広く存在する発達した神経構造で、嗅覚学習や認知を始めとする脳高次機能の中枢として機能している.ショウジョウバエにおいてキノコ体の神経細胞は、脳半球あたり4個の特異的神経芽細胞(Neuroblast)の分裂により形成されるが、このキノコ体神経芽細胞は、脳の他の神経芽細胞とは異なり、すべての発生段階を通して継続的な分裂能を維持し、成虫脳の主要な神経回路を構築するにいたる。本研究では、キノコ体の継続的な分裂を制御する候補遺伝子として、核内レセプター型転写因子tailess(tll)を同定した。 tllの発現パターンは、全ての発生ステージを通して継続的に、キノコ体の神経芽細胞と神経節母細胞(GMC)において発現している。キノコ体形成におけるtllの役割を探索する目的で、MARCMモザイク解析法を利用した機能喪失型の表現型解析を行った結果、キノコ体の神経細胞数が劇的に減少することが明らかになった。 tllモザイクにおいて、神経細胞が減少する理由を探索したところ、神経芽細胞と神経節母細胞における分裂速度の低下や神経節母細胞の細胞死といった複合的な要因に起因していた。次に、tllの分子機能を探索する目的で、異所的発現による表現型解析を行った。脳及び腹部神経節全体で強制発現させた結果、分裂細胞が増加し、これら神経節の著しい拡大が観察された。さらに、分裂能を獲得した神経芽細胞は、細胞周期制御因子の正確な発現を示すことが明らかになった。これらの結果から、tlllはキノコ体神経芽細胞の分裂に必須な機能を持つことが示された。
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