2002 Fiscal Year Annual Research Report
アルカリ金属ドープC60の光学伝導度と核磁気緩和時間の理論的研究
Project/Area Number |
01J09707
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
千田 忠彦 筑波大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電場効果ドーピング / ホールドープC_<60> / 第一原理計算 |
Research Abstract |
今年度はアルカリ金属ドープC_<60>の電子状態との比較のため,ホールドープC_<60>の第一原理計算を行なった.ホールドープC_<60>を化学的に合成することは難しいが,原理的には電場効果ドーピングを用いることによっホールを導入することができると考えられている.電場効果ドーピングとは,電界効果トランジスタ(FET)を作成し,ゲート電圧を印加することによって誘電膜に接した固体C_<60>の表面にキャリヤーを誘起する手法である.現在までに有意なホールドーピングは報告されていないが,この手法が発展すればホールドープC_<60>が実現される可能性がある.しかしながら,電場効果ドーピングによって実現される電子状態を固体C_<60>のそれから類推することは困難である.なぜなら,電場によってキャリヤーは固体C_<60>の表面に強く閉じ込められているからである.そこで電場効果を考慮した第一原理計算を行ないホールドープC_<60>の構造と電子状態を理論的に調べた. 計算の結果以下のことが明らかになった.まず,ドープされたホールはC_<60>分子内において印加された電場方向に偏ることがわかった.またホール密度が高い領域では,π結合が弱められ,C-C二重結合の結合長が約0.04Å伸びることがわかった.このような電荷密度分布の変化やそれに伴う結合長の変化は電場効果ドーピングの一つの特徴である.さらに電場効果による電荷の偏りによってバンドの分散が中性C_<60>の場合と著しく異なり,状態密度にも変化が見られた.本年度はホールドープC_<60>の計算のみを行なったが,電子ドープの場合も定性的に同様な結果が得られると予想される.したがって,化学的に電子がドープされているK_3C_<60>などのアルカリ金属ドープC_<60>と,電場効果で電子をドープしたC_<60>とを比較すれば、有意な電子状態の差が見られると考えられる.
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Research Products
(1 results)