2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J09794
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 彰子 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 漁業秩序 / 漁獲物流通 |
Research Abstract |
本研究は、近世漁業を支配・流通など多様な社会関係のなかに構造的に位置づけようとするものである。本年度は、多様な社会関係の内(1)共同体、(2)流通と漁業との相関性について考察した。解明課題は次の通りである。 1 村落類型と漁業秩序の構造・展開 2 漁獲物流通機構と漁業秩序の展開の相関性 検討の結果、新たに得られた知見は以下の通りである。小浜藩(現・福井県小浜市)と萩藩(現・山口県)の事例を中心に検討した。 1(1)漁村の開発時期と漁場利用状況の相関性 (2)漁場利用状況と魚問屋など外部資本投下の相関性 (3)漁業展開と村落階層構造の推移 2(1)生魚・干物・肥物など漁獲物の荷種別流通機構の確立 (2)新規航路の開発に伴う港湾規模の変化がおよぼす漁獲物流通機構への影響 (3)城下町生魚問屋の経営動向と城下町近隣漁村の漁業展開 上記の1を検討する中で、房総・越後などの漁業経営の特色である「漁場請負制」について、漁村の開発時期を検討の対象に含めることで体系化しうると考え、現在まとめている。これは1の課題を全国的に体系化させていくとする当初の研究計画につながるものである。次に2については、従来の漁獲物流通に関する研究は干鰯など肥物(魚肥)に集中しており、これに生魚・干物など食用をも組み込んで検討したものである。荷種をこえて漁獲物市場全体の紐帯であった「講」についてさらに検討を加える余地がある。 以上の検討を通して、外部資本の投下を大きな基軸として展開する近世期漁業の特色について、より明確にしていけるものと考えている。
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