2002 Fiscal Year Annual Research Report
トマト果実への師部および木部輸送の動態に着目した栽培環境の最適化に関する研究
Project/Area Number |
01J09922
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荒木 卓哉 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | トマト / 師管液フラックス / 道管液フラックス / 果実生長 / 物質集積 / 果実内水収支 |
Research Abstract |
トマトの果実生産は,果実の肥大生長および師管と道管を通って流入する汁液の果実への集積によって決定される.これまでの研究において,果実水収支を構成する各項目の一日あたりの動態について解析した結果,果実の生長が最も盛んになる時期に水ストレスおよび塩ストレスを与えた際,師管液の割合が増加すること,果実に集積する道管液量は著しく減少し,特に水ストレス下においては果実からの道管を通した汁液の逆流が生じること,さらに果実の肥大が抑制されることが明らかになった.更なる検討としては,受粉直後から収穫期までの果実生長の経時変動を明らかにすること,および果実肥大の抑制を緩和させる栽培管理法の確立が求められる.そのひとつとして,果実肥大が最も盛んな時期のみに塩ストレスを施与し,その後塩ストレスを解除することにより浸透圧調節機能を応用して栽培管理を行なう方法が考えられる.そこで,本年度においては,上述した培養液栽培管理を行なった際の果実乾物重,果実生体重,果実糖度および果実内無機成分について調査した. 果実乾物重は,塩ストレスの有無に関わらず差はみられなかったが,生重においては収穫期において塩ストレス区においては対照区の約70%に低下した.糖度は塩ストレス区において9.2であるのに対し対照区においては6.1と著しい増加が認められた.トマト果実生産に関する従来の研究において,塩ストレス処理によって乾物重は変化が見られないものの,生重には著しい減少が見られることが報告されている.その減少の程度は約50%であることから,本研究において施した短期間の塩ストレス処理においても果実への光合成産物の流入は維持され,さらに塩ストレス解除後も浸透圧調節機構が働くことにより,光合成産物の継続した流入および水の流入の促進がもたらされることが示唆された.これらの結果は,市場において商品価値の高い高糖度トマトの大型化のための情報を提供していると考えられる.
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