2002 Fiscal Year Annual Research Report
現地調査の手法と文献による中世庄園・村落の開発・居住・支配形態の景観復元的研究
Project/Area Number |
01J09944
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前原 茂雄 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世 / 庄園 / 村落 / 景観 / 現地調査 / 開発 / 大田庄 / 集落 |
Research Abstract |
本年度は前年度に引続き、研究対象とする中世庄園故地・大田庄(広島県世羅郡甲山町一帯)の現地調査を遂行した。前年度から継続して、中世村落の様態をよく残す東上原地区の地名・水利・民俗慣行などを古老から採集し、東上原地区についてはそのほとんどの区域を調査し終わった。また、同地区に残存する近世・近現代古文書の整理と解析を進めた。 その調査の過程で、集落構成員が精神的な紐帯としている宗教施設の境内にある湧水が、一方で灌漑用水など農業生産上での紐帯としても機能兼帯していることを解明した。中世村落の結合原理の解析の基礎となる。同時に近世文書にみえる地名や屋号の解析と古老からの聞取りにより、近世初頭の屋敷位置をほぼ解明でき、中世集落復元の大きな足がかりにできた。これらの分析は「鎌倉期村落の生活空間」「鎌倉期村落の領域と『場』の支配」として口頭発表し、整理後、投稿予定である。 一方で、中世庄園研究の根本資料である和歌山・高野山文書の資料分析も進めた。従来刊行されている資料集の内容を、高野山大学に出張し、同大学が所蔵する写真帳により厳密に校訂し、根本史料としての確定性を増した。 また、庄園故地・大田庄に関する研究状況や問題点を指摘した論考「備後国大田庄故地の研究環境」を発表した。前年度から継続して調査を進めている年貢輸送路に関する古道調査も現地踏査を繰り返し確定作業を完了しつつある。 2年めにあたる本年度は、長期滞在型の現地調査を継続して行い、古老からの貴重な情報を蓄積していく一方、現地・大学諸機関での文献調査を重視した。また、進展する庄園・村落研究に関する文献を収集し、多様な分析視角を習得した。最終年にあたる来年度は、研究のまとめとして、村落調査をもとに居住、結合原理や支配諸機関との相関関係を総体的に論じる予定である。また、調査成果を報告書の形で集成することを予定している。
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Research Products
(2 results)