2003 Fiscal Year Annual Research Report
現地調査の手法と文献による中世庄園・村落の開発・居住・支配形態の景観復元的研究
Project/Area Number |
01J09944
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前原 茂雄 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世 / 庄園 / 村落 / 景観 / 現地調査 / 開発 / 大田庄 / 集落 |
Research Abstract |
最終年度にあたる本年度は、研究のまとめを前提とする作業を行った。研究対象とする中世庄園故地・大田庄(広島県世羅郡甲山町一帯)の現地調査を、前年度に引続き遂行した。とくに、現在まで鎌倉時代の村落景観をよく伝える東上原、西上原地区の地名・水利・民俗・慣行などを古老から採集し、記録化作業を行った。同地区に残存する膨大な近世・近現代古文書(上原八幡宮文書や門原粂夫家文書など)を整理・解析し、古老からの情報を補完させた。それらの膨大な成果は、『大田庄上原村調査報告書』としてまとめるべく執筆を継続中である。大部な内容となる予定だが、そこには調査の過程で発見された、明治初年生の農民が歌った労働歌の音源も多数含む予定である。 一方、従来から取り組んできた大田庄の根本史料である高野山文書の校訂は進んだ。東京大学・京都大学・高野山大学などへの出張を通じて、校訂作業は行われ、大幅な訂正をし、それらの成果の一部は『甲山町史資料編』(日付は2003年3月刊行だが実際の刊行はそれより後)に反映させた。詳細は上記の『報告書』のなかに記述するべく準備している。 テーマのうち、開発・居住については、飲料水や灌漑の水源となる湧水所在地付近を基点として居住地が定められ、徐々に山林・耕地開発が進展していったことが判明した。近世文書や聞取り調査の成果として、近世以降の開発は極端な斜面や氾濫原にあたる河川周辺に限定されることを証明し、「中世『村』領域の形成過程」の論稿にまとめ、投稿中である。 また支配形態については、農村の核となる灌漑水源近くに領主関連の地名が集中し、一方の結合論理として宗教的編成を採用したことなどを証明し、「鎌倉〜南北朝期の預所と在地社会」の論文にまとめ、同じく投稿中である。3年間の成果は「労多くして功少なし」だが、今後も私的に調査活動を継続して、古老たちに報いたいと考えている。
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