2002 Fiscal Year Annual Research Report
サーカディアンリズム発現に関わる神経ペプチドPDFの受容体同定と前駆体局在の解析
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01J10281
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
本田 健 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 概日リズム / PDF / PFD前駆体 / モノクローナル抗体 |
Research Abstract |
PDF(Pigment-Dispersing Factor)は、昆虫脳において概日リズムに関わる神経ペプチドである。最近、このPDFが受容体を介した神経伝達物質として働くことや、神経終末のみならず細胞核でも時計機構に関与することなど、新たな事実が明らかにされた。本研究の目的は、コオロギPDFの存在様式、受容体等について解析し、概日リズム発現の分子機構を明らかとすることである。コオロギPDF前駆体はN端からPAP、PDF領域からなる。今年度は、神経細胞内におけるPDF、PAPおよび前駆体タンパク質の存在様式を解析する目的で、PDF前駆体タンパク質の各領域に特異的な抗体を用いた解析を実施した。 昨年度、PDFとPAPが切断を受けていない、つまり前駆体のみを特異的に認識するモノクローナル抗体を得るのに成功した。引き続き今年度、この抗PDF前駆体抗体を用いて、コオロギ脳-視葉における免疫染色を試みた。その結果、PDFmRNAの発現するlaminaおよびmedullaと呼ばれる部位のうち、laminaでのみ染色が確認されることが判明した。このことは、PDF前駆体はlamina細胞で優先的に生産されること、また、medulla細胞に前駆体が存在しないことより、部位におけるPDFの存在様式が異なる可能性を示した。このように、前駆体、PAPが切断された状態など、PDFの存在様式に局在部位特異性があるのは初めての例であり、この発現特異性が、概日リズム発現とどのように連関しているのか非常に興味深い。現在、こうした概日リズム性発現を検討するため、このPDF前駆体のlamina局在が時間によって変化があるかを詳細に解析している。また、より詳細なPDFの存在様式を明らかにするため、PAPが切り出された成熟PDFのみを認識する抗体、すなわちPDFのαアミノ基を含むN端側領域を認識する抗体を作製している。並行して、PAP領域を特異的に認識する抗体も作製中である。これまでに、こうした抗体を産生するハイブリドーマを得るのに成功し、得られる各抗体種の有用性を様々なペプチドを用いて確認し、PDF前駆体局在の解析に必須な分子ツールの全てをほぼ手中にすることができた。一方、PDF受容体の同定は、放射ラベルPDFを用いた昆虫脳ホモジネートに対する結合試験を実施予定であり、現在、コオロギ脳-視葉のサンプリング中である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 本田 健: "Localization Profiles of the Precursor Protein of Circadian Rhythm Pacemaker Hormone PDF in Gryllus Brain"Peptide Science 2002. (In press). (2003)
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[Publications] 河野 道昭: "Structural Requirements of Nociceptin Antagonist Ac-RYYRIK-NH_2 for Receptor Binding"J. Peptide Sci.. 8. 561-569 (2002)
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[Publications] 河野 道昭: "Structure-Activity Studies on the Nociceptin Peptidic Antagonist Ac-RYYRIK-NH_2"Peptide Science 2001. 185-188 (2002)
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[Publications] 本田 健: "Differential receptor binding characteristics of the phenylalanine residues at position 3-4 endomorphin 2"Peptide Science 2000. 139-142 (2001)