2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J10383
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 徹平 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉱山 / 労働社会 / 社会的意識・心性 / 日光精銅所 / 足尾銅山 / 坑夫 / 最適度原則 / 暴動 |
Research Abstract |
筆者の研究は産業界(主に鉱業界)における明治・大正期のいわゆる近代化施策が労働社会のあり様に与えた影響を具体的に分析する一方、集合行動等に表象される労働者の社会的意識・心性を抽出し、これと労働社会の変容との相関性を明らかにするものである。 本年度、筆者は研究の対象時期を大正期に絞り、「企業社会」の形成過程を具体化する作業を行った。具体的には、同時期のいわゆる「経営家族主義」の鋳型となったと考えられる事でも特に重要な、日光精銅所の福利厚生施策を対象とし、これが、当時(大正初期)、いかなる方針・意図の下実行されていたのか、そしてこれと既存の労働社会の変容とがいかなる相関性を有してしたのか、あるいはこれがいかなる変容を必然化したのかについて考察した。 本年度前半においては、上記の研究に必要と考えられる一次史料及び関連する文献を、主に東京(東京大学・国立国会図書館・早稲田大学)において収集し、夏以降、これらを基礎に具体的な分析作業を行った。この結果、これまで明らかでなかった事実として、日光精銅所における福利厚生施策が、同時期、欧州において主流化していた「最適度原則」に則った生産能率の増進策をほぼそのまま取り入れたものであった事、そしてそれが本来的に労働・生活環境の改変を手段とするものであった事から、必然的に労働社会の抜本的な改変が、「最適度原則」に基づいて合目的かつ積極的に行われることとなっていたという事実を明らかにした。この分析結果については、現在、論文形式で発表するための執筆作業を鋭意進行させている。また、この一部については、平成15年2月22日、東京都渋谷区勤労福祉会館において開催された金属鉱山研究会例会において研究報告を行った(題目「足尾銅山「暴動」と労働社会-坑夫の社会的意識・心性の分析-」)。 注)筆者の研究は主に足尾銅山を対象とするものである。一方で本年度、筆者が日光精銅所を研究の対象としたのは、上に記した理由の他、同所が足尾銅山と同じく古河資本による工場であり、足尾銅山に隣接し銅山から産出された銅を製品化する場であった事から、両所の経営関係が極めて密接であった事による。
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