2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J10462
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林寺 正俊 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 縁起解釈 / 『マハー・ニダーナ』 / 『ヴィバンガ』 / 『法薀足論』 / 『舎利弗阿毘曇論』 |
Research Abstract |
部派仏教における縁起解釈は、十二支縁起説をそれぞれの部派の教理に従って解釈する立場に基づいているが、原始仏典における縁起思想の発展を見るならば、支分の少ない縁起説の意味内容を明らかにすることも重要である。そして、十二支に充たない縁起説が部派仏教においてどのように扱われているかを調査することも、縁起思想の解明に必要な課題である。 この点について、南方上座部(大寺派)の『ヴィバンガ(Vibhanga)』、さらに北伝アビダルマの中で『ヴィバンガ』と密接な関係にあり時代的にも古いとされる、説一切有部の『法薀足論(Dharmaskandha)』、および法蔵部の所伝とされる『舎利弗阿毘曇論』を比較検討した。その結果、『ヴィバンガ』におけるアビダンマ分別の縁起解釈の中に、『マハー・ニダーナ(Maha-nidana)』に説かれる九支縁起説の影響が反映しており、また『法薀足論』や『舎利弗阿毘曇論』も十二支縁起説を解釈する一方で、同時にまた『マハー・ニダーナ』、あるいはそこに説かれる特殊な縁起説をも意識していることが明らかになった。このことは、『マハー・ニダーナ』の縁起説が原始仏典において重要な意義を有しているとともに、初期の論書における縁起解釈において大きな関心事であったことを示していると考えられる。 本年度9月18日から3月18日までは科学研究費補助金の外国旅費を使用して、英国オックスフォード大学の東洋学研究所(Oriental Institute)において、以上の研究、および関連する資料の調査を行った。
|