2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J10472
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
榊 祐一 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 文字改良 / 国字問題 / 仮名文字論 / 洋字論 / 漢字廃止論 / ふりがな / 音声中心主義 |
Research Abstract |
今日「近代詩」と呼ばれる知の枠組みが、同時代のいかなる文化的条件と関って形成されたのかを、近代詩の起源と目されてきた『新體詩抄初編』から明治二十年代前半までの詩をめぐる状況を対象として明らかにすること(A)、並びに、明治初期の言説空間における様々な知の枠組みを「近代詩」という焦点を通して浮き彫りにすること(B)、この二点が本研究の目的である。今年度は、『詩抄』の「詩」語観の位置測定に関わる作業の一環として、明治初期の「言語」をめぐる知の分析作業を行ない(→Bの系列に対応する作業となる)、その成果として、論文「「文字」をめぐる問題系-明治初期の「文字」改良論に注目して-」を公表した(『國語國文研究』123号)。 同論が分析対象としたのは、明治初年代〜十年代半ばまでの「文字」改良論の言説である。そこでは、同時期の文字改良論の言説の多くが「音声中心主義」的な構図-文字とコトバ=音という二項対立を前提としつつ、前者が後者を表象=代行するものと位置づける構図-を共有していることを指摘した上で、それらの言説が、関係する(言説上の)コンテクストの違いにより、三つの系列に分化していたことを記述。その上で、同時代の文字改良論がすべて「音声中心主義」的な構図に従っていたわけではないことにも注目し、文字とコトバを<表象/表象されるもの>という関係でとらえない非「音声中心主義」的な文字観において、文字改良が志向されるような線-いわゆる「やはらげ」的な実践につならる線-も存在していたことを明らかにした。
|
Research Products
(1 results)