2002 Fiscal Year Annual Research Report
量子力学の諸解釈を検討することによって、科学理論の特質、目的を考察する。
Project/Area Number |
01J10654
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
槌田 貴仁 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 科学基礎論 / 科学哲学 / 物理学の哲学 / 量子力学 / 解釈問題 / 観測問題 / デコヒーレンス / 多世界解釈 |
Research Abstract |
当該補助金の交付申請書に記載した研究目的、研究実施計画に基づき、量子力学(微視的対象の運動を記述する物理理論)を我々はどのように解釈したらよいのか、ひいては科学理論一般が何を目指して進んでいるのかを明らかにするため、「デコヒーレンス理論」と、他の量子力学解釈との関係について、今年度は研究を行った。 デコヒーレンス理論とは、電子などの検出過程を微視的対象と装置の相互作用とみなし、量子力学を用いてその過程を記述しようという量子測定理論の1つである。また、それは現在提出されている測定理論の中で最も物理学者から支持されうるもの、あるいは自然に受け容れられるであろうというものである。 量子力学を解釈するということは、量子力学の中に現れる数学的対象を現実の事物と対応させ、量子力学を概念的に矛盾なく理解しようとする作業である。量子力学の数学的形式から我々が考えられうることは何かという観点から、その作業を進めるというのも1つの方法であろう。しかし、物理学者が素朴に考え、用いている理論が、整合的に解釈がされていないにせよ、一応の成功を見ているというのは注目に値する。そこで私は物理学者が提案する量子測定理論の1つ、デコヒーレンス理論を取り上げ、この理論と他の量子力学解釈(特に、多世界解釈)との関係を考察した。その概要は以下である。 デコヒーレンス理論と多世界解釈の特質を調べ、それらを比較検討した。デコヒーレンス理論で用いられている量子力学解釈は、多世界解釈の一変種とみなすことができ、さらに、多世界解釈が孕んでいた問題点を解決した形になっているというのが結論である。様々な量子力学解釈の中での、デコヒーレンス理論の解釈の位置づけが、多世界解釈の発展形と見ることによって、より鮮明となった。ちなみに、今年度の研究で得られた知見は、11月に行われた日本科学哲学会で発表された。
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