2002 Fiscal Year Annual Research Report
トウヒ属の環境耐性に関する生理特性と環境修復に関する研究
Project/Area Number |
01J10734
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
香山 雅純 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | トウヒ / 蛇紋岩土壌 / 光合成 / 栄養生理 / 外生菌根菌 |
Research Abstract |
本研究の目的として、土壌要因によって植物の生育が抑制される蛇紋岩土壌において分布しているアカエゾマツに関して、養分吸収特性と葉の光合成特性に着目した。アカエゾマツの環境耐性を生理的に明確にするために、近縁のエゾマツと、欧州に広範囲に分布するヨーロッパトウヒを用いて比較・検討する。この結果を基礎にして、アカエゾマツをはじめトウヒ属を緑化樹種として他の樹木の生育が困難な地域での環境修復に応用することを最終的な目的とした。本年においては、前年に蛇紋岩土壌に植栽を行ったトウヒ属3樹種の苗に関して、様々な成長反応を検討した。 アカエゾマツ、エゾマツ、およびヨーロッパトウヒ苗3種を蛇紋岩土壌と褐色森林土に造成した苗畑に植栽した実験の結果、アカエゾマツの成長量は両土壌間において有意差が認められなかった。しかし、エゾマツとヨーロッパトウヒは蛇紋岩土壌に植栽した個体の成長量は小さかった。また、蛇紋岩土壌に植栽したアカエゾマツでは、他の樹種より植物体中のNiやMgは低い濃度を示した。その原因として、蛇紋岩土壌に植栽したアカエゾマツは根と共生している外生菌根菌の感染率が高く、Niの吸収の抑制されていたと考えられる。さらに、光合成能力に関しては、蛇紋岩土壌に植栽したエゾマツとヨーロッパトウヒでは大きく低下したが、アカエゾマツに関しては低下しなかった。その原因として、蛇紋岩土壌に植栽したアカエゾマツでは窒素利用効率が特に高く、少ない窒素濃度で高い光合成能力を得ていたと考えられる。以上の結果から、アカエゾマツは、トウヒ属樹木3樹種の中で蛇紋岩土壌に、最も高い適応性を持っていると考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kayama, M., Quoreshi, A.M., Kitaoka, S., Kitabashi, T., Sakamoto, Y., Maruyama, Y., Kitao, M., Koike, T.: "Effects of deicing salt on the vitality and health of two spruce species, Picea abies Karst, and P. glehnii Masters planted along roadsides in northern Japan"Environmental Pollution. 123(in press). (2003)
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[Publications] 小池孝良, 香山雅純, 北尾光俊: "変動環境下での冷温帯樹木根系の成長"根の研究. 11. 161-169 (2002)