2002 Fiscal Year Annual Research Report
現代民主主義政治とマスメディア:政治過程におけるマスメディアの影響分析
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01J10750
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柴田 晃芳 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マス・メディア / 政治過程 / 政治制度 / マス・メディアの制度 / アイディア / アイデンティティ / 利益認識 / 変化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代日本の政治過程におけるマス・メディアの影響力の解明にある。そのために、政治過程における政治的制度とマス・メディアに関わる制度という二つの制度の特性と相互作用、およびそこでのアイディアの役割の焦点を絞った分析枠組を構築した。ここで、政治的制度についての視点は歴史的制度論の成果に、マス・メディアの制度についての視点は政治経済学的マス・メディア研究の成果に、それぞれ依拠している。またアイディアとは、アジェンダ形成段階においては「何がどう問題か?」ということに関する「問題の認識枠」であり、政策形成段階においては「問題にどう対処するか?」に関わる「政策アイディア」を指す。政治的制度は政治システム内でのアイディアの流れに影響を与え、マス・メディアの制度はメディア・フレームに影響を与える。また両者は不均等な相互作用を持つ。この両者によって、政治システム内でのアイディアの流れが規定される。 事例研究に基づく実証はいまだ不十分なものの、以下の仮説が得られている。(1)政府のマス・メディア政策によりマス・メディア組織の所有形態や競争度は変化し、これがジャーナリズム機能に一定の影響を及ぼす。(2)取材形態と報道技術の変化に代表されるマス・メディアの制度変化が、政治家のパブリシティ構造ひいては権力関係に影響を与える。さらに、社会の政治的組織化の低下傾向がマス・メディアの政治的影響力に大きく関係しているとの予測も得られた。 以上の仮説および予測は1993年政変以降の日本政治の変動を分析する上で重要な視点を提供している。特に近年の田中長野県政、石原東京都政、小泉政権といった出来事は、本研究の仮説を直接的に支持するものとはいえないまでも、仮説の検証にとって重要な事例となることは疑いない。
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