2002 Fiscal Year Annual Research Report
酪農の環境汚染による外部不経済と内部化に関する評価と費用負担の環境経済学的研究
Project/Area Number |
01J10868
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩本 博幸 北海道大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 酪農 / 家畜排せつ物 / 環境評価 / CVM / コンジョイント分析 / Choice Experiments / 費用負担 / エコラベル |
Research Abstract |
本研究は,酪農のふん尿による環境汚染を非点源汚染と位置づけ,外部不経済の経済的評価,外部不経済の内部化費用の経済評価と費用負担について,環境経済学と公共経済学の視点から分析することを目的としている.農業の外部不経済に関する経済学的研究は,国内では十分な研究成果があるとはいえない状況にあり,農林業一般の外部不経済を内部化する方策についての貴重な基礎研究となることが期待される.具体的には,以下の分析課題を設定している. 1.CVM(仮想市場評価法),コンジョイント分析による外部不経済の貨幣評価. 2.コンジョイント分析などによる酪農家負担での外部不経済の内部化費用評価. 3.外部不経済内部化費用負担のルール設定に関する実証的分析. 昨年度は,分析課題1および2について取り組んだ.1.については,北海道西紋地域(紋別市,興部町,雄武町,滝上町,西興部村)の住民を対象として,CVMによる酪農家畜ふん尿の外部不経済を経済評価した結果,約2.1億円の外部不経済が発生していることを明らかにした.2.については,札幌・帯広住民を対象として,選択型コンジョイント分析による普通牛乳のエコラベル評価を実施した. 本年度は,3.に関して,2.で明らかにされたエコラベルの評価額が複数年にわたって安定的に推計されうるかを確認し,費用負担の可能性について検討した.分析の結果,エコラベル付加牛乳の評価額は,絶対額においてばらつきが見られるものの,常にプラスであった.したがって,この分析結果から,消費者が環境対応を実施して生産された普通牛乳に対して追加的な支払意志があることが示され,エコラベルによる付加価値化という,費用負担の可能性が示された.この消費者負担許容額は,酪農家の環境対策による環境便益ととらえることができる.したがって,消費者評価を含めた酪農家の環境対策による便益を酪農家の費用負担と比較検討する費用便益分析をおこなうことが必要であるが,今後の課題としたい.
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Research Products
(1 results)