2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経分泌細胞の神経活動によるホルモン遺伝子発現調節機構
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01J10963
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
斉藤 大助 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経分泌細胞 / バソトシン / ニジマス / 繁殖行動 / Ca^<2+>パルス / Ca^<2+>イメージング / ゴナドトロピン放出ホルモン / 神経内分泌系 |
Research Abstract |
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は,その線維が脳内に広く投射しており,神経修飾物質として繁殖行動の調節に関与していると考えられる.視床下部の神経分泌細胞の周囲にはGnRH陽性線維が密に分布している.神経分泌細胞で産生される神経葉ホルモン,特にバソプレシン・ファミリーは多くの脊椎動物で繁殖行動の発現に関与していることから,GnRHが神経分泌細胞の神経活動を調節している可能性を検討した. これまでに,ニジマス視索前核の神経分泌細胞が脳室表面に沿って平面的に分布していることを利用して,コンフォーカル顕微鏡により単一光学切片に含まれる5-50個の神経分泌細胞の細胞内Ca2+濃度変化を記録する系を確立した.バソトシン(VT)細胞とイソトシン(IT)細胞がそれぞれ同期して細胞内Ca^<2+>濃度の周期的上昇を示すことを明らかにしており,この系を用いてGnRHの潅流投与に対するCa^<2+>パルスの反応を調べた. ニジマス脳内にはサケ型(sGnRH)およびニワトリII型(cGnRH II)の2種類のGnRHが存在する.二重免疫蛍光法によりGnRHの視索前核周辺での投射パターンを調べたところ,sGnRHの線維投射は神経分泌細胞の近傍および視索前核の周縁部に多数見られた.またcGnRH IIの線維もわずかに見られた.sGnRHおよびcGnRH IIの潅流投与により濃度依存的な周期的Ca^<2+>パルス頻度の増加が見られた.500nMのsGnRHを潅流投与するとCa^<2+>パルスの頻度はVT細胞,IT細胞ともに約3倍に増加した.一方,cGnRH IIは50nMで同等の効果が認められた.VT細胞,IT細胞に対するEC_<50>はsGnRHがそれぞれ164nM,70nM,またcGnRH IIが20nM,5nMだった.さらに,GnRHアンタゴニストのAntide(2μM)の前投与によりcGnRH II(20nM)の効果は有意に阻害された.以上より,sGnRHおよびcGnRH IIはいずれも神経分泌細胞の神経活動の調節因子として作用することが明らかになった.
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