2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞死における神経突起変性・崩壊メカニズムの解析
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01J10986
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池上 浩司 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 神経突起変性 / 神経細胞死 / 突然変マウス / 上頚神経節 / 微小管重合阻害剤 / ATP / ウォーラー変性 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
本年度の研究では,上頚神経節(SCG)の組織片培養法を用い,細胞体と神経突起のATP含有量をそれぞれ別々に測定し,以下の新たな知見を得た. 神経突起と細胞体の変性はそれぞれ独立した変性カスケードにより支配されている 野生体のSCG細胞では,ビンブラスチン処理により,神経突起変性(36時間以降)に先立ち突起のATPが顕著に減少した(24時間以内).一方,突起変性に対し耐性を示す突然変異体(C57BL/Wld)の神経突起では,長時間(48時間以上)のビンブラスチン処理においてもATPの減少が見られなかった.同様の結果は,培養下におけるウォーラー変性のモデルにおいても見られた.これらの結果は,突起変性と突起内のATP量変化の間に強い相関があることを示している.これに対し,細胞体のATPは細胞死が起こるまで維持されていた.以上の結果より,同一の細胞が,突起と細胞体において,それぞれ全く異なる変性カスケードを有している(すなわち,突起はエネルギー枯渇による非アポトーシス様の変性を起こすのに対し,細胞体はエネルギーを必要とするアポトーシス様の変性を起こす)ことが示唆された.更に,突起変性に先立つATP量の時間的変化を調べた結果,ビンブラスチン処理後12時間において,ATPは完全に枯渇していた.また,12時間以降の培地からのビンブラスチン除去は,突起の変性を抑制しなかった.これは,ATPの枯渇が突起変性の決定的な現象であることを示しており,上述の突起変性の非アポトーシス性に関する結果とよく一致する. これらの結果を,日本神経科学学会及び北米神経科学会において発表した.また,現在,これらをまとめた論文を学術雑誌に投稿中である.研究の進展状況として,上記結果を踏まえ,突起特異的にATPの枯渇を引き起こす要因を探索するため,ATP枯渇直前に処理時間を絞り込み,二次元電気泳動法による実験を検討中である.
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