2002 Fiscal Year Annual Research Report
隕石中の全クロム同位体存在度の変動からみた太陽系形成過程における物質進化の研究
Project/Area Number |
01J11233
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷水 雅治 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 誘導結合プラズマ / 質量分析法 / 亜鉛 / 同位体存在度 / 原子量 / 同位体差別効果 |
Research Abstract |
多重検出器を備えた磁場型誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)は、元素の同位体比を精密に測定するために開発された。この分析計はイオン化効率が従来の熱イオン化型質量分析計よりも格段に高く、いままで測定できなかったイオン化ポテンシャルの高い元素の同位体比測定が可能である。しかしながらMC-ICP-MSは、分析計内で起こる質量差別効果の程度が従来の分析計よりも大きく、その原因と機構を解明できていないのが現状である。これらを理解することにより、精密なだけでなく、正確な同位体比測定が可能となる。そこで本年度は、MC-ICP-MSを用いて亜鉛の同位体存在度を正確に決定することを試みた。亜鉛はイオン化ポテンシャルが大きい元素の一つで、MC-ICP-MSにおいてもイオン化効率の低い元素である。亜鉛の同位体存在度とその質量差別の程度を見積もる事により、質量差別効果がイオン源で起こっているのか、イオン選択部で起きているのか特定できると考え、ダブルスパイク法を用いて実験を行なった。 その結果は、現在採用されている亜鉛の同位体存在度の値の再考を促すものであった。従来の亜鉛同位体存在度から見積もられた質量差別効果の大きさは、質量数の近いニッケル、銅、ガリウムのものとは大きく異なっており、ICPイオン源におけるイオン化時の同位体差別が示唆されていたが、本研究の結果は、それらの元素とほぼ同等の質量差別効果であることを示していた。このことから、MC-ICP-MSでの同位体差別効果はイオン化効率に依らず近い質量数の元素間ではほぼ一定で、イオン源において質量差別は起こっていないと結論づけられた。得られた成果は2002年度日本地球化学会および2003年度欧州冬季プラズマ分光化学会において発表、国際誌Analytical Chemistryに印刷済みである。
|
-
[Publications] Masaharu Tanimizu: "Absolute isotopic composition and atomic weight of commercial zinc using inductively coupled plasma mass spectrometry"Analytical Chemistry. 74・22. 5814-5819 (2002)
-
[Publications] Masaharu Tanimizu: "Coupled Ce-Nd isotope systematics and rare earth elements differentiation of the moon"Geochimica et Cosmochimica Acta. 66・22. 4007-4014 (2002)
-
[Publications] 谷水雅治: "放射性核種の壊変を利用した岩石資料の年代測定"Journal of Plasma and Fusion Research. 78・7. 653-658 (2002)