2002 Fiscal Year Annual Research Report
高臨界電流密度超伝導材料における局所電子・磁気特性に関する研究
Project/Area Number |
01J11386
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木野田 剛 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超高真空・低温STM / 高温超伝導体 / 局所電子状態 / 相分離 / 磁束ピニング |
Research Abstract |
本研究では、極低温で動作する走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、高臨界電流密度(J_c)超伝導体における電子状態の空間変化を明らかにし、ピニングサイトの電子構造ならびに磁束ピニング機構を鮮明することを目的としている。 前年度では、特に、高J_c材料である高濃度Pb置換Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(Pb-Bi2212)の低温STM/STS、測定を行い、Pb濃度の異なる二相への相分離界面における超伝導特性評価に焦点を当てた。その結果として、同界面を温度誘起のピニングサイトとして提案した。本年度は、本研究の最終年度に当たるが、同系のSTM/STS測定をより詳細に行い、本系に固有な電子状態の不均一性を新たに見出した。 まず、広範囲のSTM測定より、上記化学相分離を確認した。また、各相の原子分解能観察から、Biサイトを置換しているPb原子の解像に成功すると共に、超伝導と擬ギャップ領域へのナノスケールの電子相分離を見出した。Pb量の異なる領域でのSTS測定から、Pb添加は電子相分離には直接関与していないことがわかった。また、酸素導入によっての不均一性の増大が確認されたことから、(BiO)_2層に導入された過剰酸素によって超伝導クーパー対の位相コヒーレンスが失われ擬ギャップ状態が生じると結論された。 また、Pb-Bi2212の様々な層にある不純物(Bi、Sr(Ca)およびCuサイト)の可視化および同定に成功し、これら不純物の分布ならびに電子状態についてSTM/STS測定を行った。トンネルスペクトルの比較から、Cuサイトの不純物以外は準粒子の散乱体として作用しないことがわかった。このことより、Cuサイトに導入した不純物がピニングサイトとして有効であると提案した。また、これら不純物原子の空間分布と電子相分離との間には相関は無いことが判明し、上述した過剰酸素による擬ギャップ形成の描像を支持する結果である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] G.Kinoda, S.Nakao, T.Motohashi, Y.Nakayama, K.Shirnizu, J.Shirnoyama, K.Kishio, T.Hanaguri, K.Kitazawa, T.Hasegawa: "Inhornogeneous Electronic Structures in Heavily Pb-Doped Bi_2Sr_2CaCu_2O_y Single Crystals Probed by Low Temperature STM/STS"Physica C. (印刷中).
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[Publications] H.Mashima, G.Kinoda, H.Ikuta, T.Hasegawa: "Cryogenic STM/STS Observations of Pb-Doped Bi_2Sr_2CuO_y Single Crystals"Physica C. (印刷中).
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[Publications] M.Nishiyama, G.Kinoda, S.Shibata, T.Hasegawa, N.Koshizuka, M.Murakarni: "Low Temperature Scanning Tunneling Spectroscopy Studies of High J_c NdBa_2Cu_3O_<7-δ> Single Crystals"Journal of Superconductivity Incorporating Novel Magnetism. 15. 351-354 (2002)