2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J60022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷脇 香 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マトリクスメタロプロテアーゼ / MT1-MMPノックアウトマウス / 大腸由来上皮細胞株 / 実験的肝転移アッセイ |
Research Abstract |
癌細胞に高頻度に発現するMT1-MMPが癌の進展においてどのような意義を持つのかを明らかにするため、当研究室で作製されたMT1-MMP遺伝子欠失マウス由来の上皮細胞株を樹立し、これをトランスフォームさせたものを同系のマウスに移植し、造腫瘍能・転移能を評価した。 MT1-MMP/p53遺伝子欠失マウス、および野生型p53欠失マウスより大腸由来上皮細胞株を樹立し、これにv-srcを遺伝子導入してトランスフォームさせた。これらの細胞のin vitroでの浸潤能をマトリゲル浸潤アッセイで検討したところMT1-MMP遺伝子欠失細胞株では野生型細胞株に比較して有意に浸潤能が低かった。また、メタロプロテアーゼ阻害剤BB-94の存在下、MT1-MMP特異的阻害剤TIMP-2の存在下において、野生型細胞株の浸潤能はMT1-MMP遺伝子欠失細胞と同程度に低下したことから、野生型細胞株の浸潤にはMT1-MMPが関与する可能性が示唆された。 次に両細胞株を同系野生型マウスの皮下に移植して造腫瘍能を検討したところ、野生型細胞株由来の腫瘍体積はMT1-MMP遺伝子欠失細胞由来の腫瘍体積に比較して有意に大きかった。また脾臓に移植して肝転移能をみると、MT1-MMP欠失細胞株の転移能は野生型細胞株に比較して有意に低かった。またMT1-MMPがMMP-2を活性化することが癌の浸潤・転移に必須か否かを検討するために野生型細胞株をMMP-2遺伝子欠失マウスに移植した場合には、野生型マウスに移植した場合に比較して、肝転移能が有意に低い結果を得た。 以上のことよりMT1-MMPはin vitro、in vivoにおいて上皮系癌細胞の造腫瘍能・転移能に関与していることが示唆された。また肝転移系では宿主側のMMP-2の有無により野生型細胞の転移能に差が生じることから、MT1-MMPによるMMP-2の活性化が臓器転移に関与している可能性が示唆された。
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