2002 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞のアポトーシス抵抗性を標的とする抗ガン物質の探索
Project/Area Number |
01J60025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富川 泰次郎 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スクリーニング / 抗ガン剤 |
Research Abstract |
Ras依存的に生存する細胞に対して選択的に細胞死を誘導する物質としてRasfoninが微生物代謝産物中より見いだされた。RasfoninはRasの発現には影響を与えずに、Rasの下流に存在するMEK、MAPKのリン酸化を阻害し、さらにRasの下流に存在しMAPKとは別の経路にあるS6Kのリン酸化も弱いながら阻害することがわかっていた。また、Rasfoninのファルネシル化阻害効果は観察されなかったことから、RasfoninがRasのファルネシル化以外でRasの活性化を阻害しているという可能性とある程度の選択性をもつリン酸化酵素阻害剤として働いている可能性の二つが考えられていた。Rasfoninのリン酸化阻害剤としての機能を検討するためPKC阻害活性を検討した。その結果、RasfoninはPKC阻害活性を持たないことが判明した。したがって、RasfoninはRasのファルネシル化以外でRasの活性化を阻害していることが考えられる。 一方でヒトパピローマウイルス癌遺伝子導入細胞に対して選択的に作用する物質を微生物代謝産物中から探索した結果、Pseudomonas sp.と同定された菌株が新規物質QN5727を生産していることを見出した。QN5727はベンゾラクトンエナミド構造を有し、V-ATPase阻害剤であるOximidine Iの類縁化合物であることが明らかとなった。QN5727はras, src癌遺伝子導入細胞に対しては細胞周期停止を誘導し、CDK阻害タンパク質であるp21の蛋白量の増加を誘導した。V-ATPaseを阻害することにより、どのような機構でp21の蛋白量の増加が誘導されるのかは非常に興味深い。
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