2002 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞増殖因子(HGF)による細胞増殖抑制機構の解析
Project/Area Number |
01J60039
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
束田 裕一 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | HGF / ERK / 癌細胞増殖抑制 / 細胞生理学 / 分子生理学 |
Research Abstract |
肝細胞増殖因子(HGF : hepatocyte growth factor)は、培養細胞系及びin vivoの系において多様な作用を示す多機能生理活性物質である。このHGFの多様な作用の中には、正常細胞の細胞増殖を促進し、ある種の癌細胞の増殖を抑制するという大変興味深い現象がある。私が行った現在までの研究の結果、HGFによる細胞増殖促進、抑制は共にERKの活性化を必要とするが、抑制にはERKの強い活性化が必要であり、それは細胞周期の停止によるものであることが示唆された。そこで本研究はERKの活性の強さによる細胞増殖の制御機構及び応答細胞の違いによりHGFが誘導するERKの活性化の強さが異なる原因を明らかにすることで、HGFによる細胞増殖抑制機構を解明することを目的としている。 今年度はERKの活性の強さによる細胞増殖の制御機構の解析を、HGFにより細胞増殖が抑制されるヒト肝癌細胞HepG2を用いて、異なる活性化レベルのERKによる細胞周期制御因子への影響を解析することにより行った。その結果、HepG2ではHGFによるERKの強い活性化により、リン酸化部位にSer780、795、807/811を含むRbタンパク質の高リン酸化を担っているCyclinA-Cdk2 complexの活性が低下し、Rbタンパク質の低リン酸化型が増加することで細胞周期がG1期で停止し、細胞増殖抑制作用が導かれることが示唆された。そしてこのCyclinA-Cdk2 complexの活性が低下するメカニズムとしてはCdk inhibitorのp21の発現量の増加、及びCyclinAの発現量が減少することが示唆された。
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