2003 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質結合ドメインの組織的同定とそれを用いた相互作用ネットワークの機能解析
Project/Area Number |
01J60040
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
久保田 浩行 金沢大学, がん研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | GC経路 / TOR経路 / ストレス応答 |
Research Abstract |
酵母細胞はアミノ酸飢餓に陥るとeIF2αキナーゼGCN2依存的にeIF2αをリン酸化し、翻訳全般を抑制する。しかし転写因子GCN4はその5'-UTRに存在する特徴的な構造のため、通常抑制されていたmRNAの翻訳が脱抑制され、下流のHis3等の遺伝子の転写を誘導する。この一連の応答がGC経路であり、アミノ酸刺激以外の活性化機構に関しては全く明らかにされていなかった。前年度までに我々は、GC経路とは別の栄養感知機構であるTOR経路の特異的阻害剤ラパマイシンもアミノ酸飢餓と同様にリン酸化eIF2αの量を増加させて、GCN4 mRNAの翻訳を脱抑制する知見を得ていた。アミノ酸飢餓とラパマイシンによるリン酸化eIF2dの増加はGCN2依存的である。しかしながら、アミノ酸飢餓が遊離tRNAの増加を引き起こすのに対して、ラパマイシンは遊離tRNAの増加を伴わずにGCN2を活性化する。GCN2の遊離tRNAへの親和性はSer-577のリン酸化によって上昇するが、gcn2-S577E,S577A変異株ではラパマイシンによるGCN4 mRNAの翻訳脱抑制が著しく障害されていた。以上より、ラパマイシンは従来と異なる機構でGCN2を活性化することが示された。そこでSer-577の脱リン酸化がラパマイシン以外の刺激によるGCN2の活性化にも関与する可能性を検討するために、今までに報告のあるGCN2活性化刺激であるMMS,アデニン欠乏,炭素飢餓等を野生株ならびにSer-577の変異株に与え、eIF2αのリン酸化とGCN4 mRNAの翻訳脱抑制を比較検討した。その結果、炭素飢餓に対するこれらの応答がSer-577変異株では野生株よりも著しく低下することを見い出した。以上の結果は、これまで詳細が不明であった炭素飢餓によるGC経路へのTOR経路の関与を示唆するものである。
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