2002 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質結合ドメインの組織的同定とそれを用いた相互作用ネットワークの機能解析
Project/Area Number |
01J60040
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
久保田 浩行 金沢大学, がん研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 相互作用ネットワーク / GC経路 / TOR経路 |
Research Abstract |
研究代表者は酵母アミノ酸飢餓応答反応において中心的役割を担う翻訳開始因子eIF2αキナーゼGCN2を中心とするGC経路をモデルに、相互作用ネットワークの機能解析を行ってきた。酵母細胞はアミノ酸飢餓ストレスに応答してGCN2依存的にeIF2αをリン酸化し、転写因子GCN4の翻訳を脱抑制する。前年度迄に我々は、GC経路とは別の栄養感知機構であるTOR経路の特異的阻害剤ラパマイシンもeIF2αをリン酸化するという知見を得ていた。そこで今年度では更にこの連関を掘り下げ、以下の知見を得た。 1、ラパマイシン耐性であるTOR1-1株ではこの現象が見られない。 2、この現象は哺乳類由来の非GCN2型eIF2αキナーゼを発現させたgcn2Δ株では観察されない、つまり、この現象は未同定のeIF2αフォスファターゼではなくキナーゼであるGCN2によって担われている。 3、tRNAと結合出来ないgcn2 m2の解析から、ラパマイシンによるGCN2の活性化にはアミノ酸飢餓時と同様にfree tRNAのGCN2への結合が必須である。が、アミノ酸飢餓時とは違い、GCN2の活性化にはfree tRNAの増加は必要しない。 4、GCN2の577番目のSerのリン酸化はtRNAへの親和性を制御しており、その変異株gcn2 S577A, gcn2 S577EにおけるラパマイシンによるGCN4の脱抑制の割合はアミノ酸飢餓よりも低下していた。 以上の結果は、今まで明らかにされていなかったGC経路とTOR経路という2つの栄養感知機構のクロストークを示すだけではなく、TOR経路が新規の機構を用いてGC経路を制御している事を示している。今後はこの両経路のクロストークを司る分子の実体を、アフィニティタグによる免疫沈降物の質量分析、2ハイブリッドスクリーニング、そして遺伝学的手法も用いて同定し、GC経路を中心とした相互作用ネットワークの探索を行っていく予定である。
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