2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J60046
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
篠田 和紀 名古屋大学, 大学院・理学研究科・生命理学専攻, 特別研究員(DC2)
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Keywords | モジュール / 蛋白質の折れ畳み / バルナーゼ / 熱変性 / 分子動力学 / 疎水性相互作用 / エクソン / ゲノム |
Research Abstract |
モジュールは、球状ドメイン内のコンパクトで力学的に安定な構造単位である。蛋白質立体構造の構築・進化の単位と考えられているモジュールが折れ畳み過程で果たす役割を理解する為に、バルナーゼの水中での498Kにおける熱変性過程の分子動力学シミュレーションを静電相互作用のカットオフなしで3ns×5回行った。昨年度の5回分と合わせて10回のシミュレーション結果を統合的に解析することにより、カオス的な振る舞いを見せる各シミュレーションから共通な特徴をより曖昧さを少なく抽出することを目的とした。その結果、10回のシミュレーションに共通な特徴として、変性過程において二次構造や疎水性コアなどの構造要素は徐々に失われていくのに対し、天然モジュール境界はほぼ100%維持され、モジュールは変形しながらも相対的にコンパクトな構造をかなりの間保つことがわかった。これは主にモジュール内両末端領域残基間の疎水性相互作用が維持されているためであった。生理条件での自由エネルギー曲面が498Kのものと定性的に違わないとすれば、今回の結果を逆に辿ることで、バルナーゼはまず折れ畳み初期の非特異的な疎水性相互作用により、個々のモジュールが進化的に疎水性残基が局在する両末端領域間が閉じてコンパクトに凝縮し、その後特異的相互作用を形成しながら天然構造に折れ畳むことが示唆された。折れ畳み初期に個々のモジュールがコンパクトにまとまることは構造空間の劇的な縮小を伴うので、蛋白質の折れ畳み問題におけるLevinthal Paradoxを解く要因になり得る。これらの結果から、ゲノム情報は、進化的にモジュールの末端領域に疎水性アミノ酸残基が多いという情報を内包することによって、蛋白質の折れ畳みの情報をもコードしていることが示唆され、本研究はゲノム構造と蛋白質の折れ畳みのメカニズムを初めて直接関連付けることができたと言える。
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