2003 Fiscal Year Annual Research Report
脊索動物ホヤの遺伝学的解析の基盤整備―――系統の確立とエンハンサートラップの開発
Project/Area Number |
01J60048
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
狩野 俊吾 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Ciona intestinalis / 連鎖地図 / 系統作製 / 海産無脊椎動物 / 遺伝学 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
遺伝的に識別が容易な2つの野生集団(イタリア・ナポリ産とイギリス・プリマス産)のコーディング領域の塩基配列比較を行い、exonでは集団内で保存性が極めて高く(多型は少なく)、一方でintronではinsertion/deletionまたは塩基配列の違いが見られ(多型が多く)、この集団間の交配パネルがcDNA mappingに適していることを明らかにした。このような遺伝的背景を固定するため、ナポリ産集団より個体を選抜し弟妹交配によりF4を作製した。 AFLPマーカーをベースとした遺伝地図の作製を、プリマス産とナポリ産のF1 pseudo-crossによる交配パネルを用いて行った。これにより各(集団)個体由来の2つの連鎖地図が得られ、約230個のプリマス産由来AFLPマーカーからなる連鎖地図は14の連鎖群を形成し全体長は約2,950cMであった。この連鎖地図は飽和には至っていないものの染色体数(2n=28)に相当する連鎖群に収束することから、各連鎖群は染色体に対応して考えることが出来ると考えられる。一方で約110個のナポリ産由来AFLPマーカーは9つの連鎖群と非連鎖マーカー群に分類された。2つの集団間でのマーカー数が異なることは、a)使用した個体の多型度合いが少ない、b)生殖細胞(卵と精子)によって減数分裂の度合いが異なる、ことの反映だと考えられる。AFLPマーカーをSTSマーカーに変換したところ、ほとんどのマーカーがCionaゲノムデータベース上で一意に対応し、これらのマーカーがSTSマーカーとなることが分かった。これらのSTSマーカーはCiona intestinalisにおけるゲノムアッセンブルに有用である。例えば、scaffolod39,scaffold304は同一の染色体に位置し、scaffold22,scaffold417はそれぞれ前者2つとは違う染色体に位置することが示唆される。これらのSTSマーカーは新たな遺伝マーカーとなり、系統評価のための遺伝的プロファイルの作製、物理地図との対応付け、育種学的な手法の導入などに有効であると考えられる。
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[Publications] Sasakura Y, Awazu S, Chiba S, Kano S, Satoh N.: "Application of Minos, one of the Tc1/mariner superfamily transposable elements, to ascidian embryos as a tool for insertional mutagenesis."Gene. 308. 11-20 (2003)