2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J60060
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 貴雄 慶應義塾大学, 医学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 神経幹細胞 / Musashi / Numb / Nestin / Notchシグナル |
Research Abstract |
神経幹細胞の基本的な性質を明らかにするために、神経系幹細胞に選択的に発現している遺伝子を用いて解析を行っている。Nestinは、神経幹細胞に強く発現する中間系フィラメント構成蛋白質であるが、この蛋白質をコードする遺伝子の発現エンハンサー領域の制御下に緑色蛍光蛋白質を発現させるトランスジェニックマウスを用いて神経幹細胞を分画し、主にNotchシグナルの構成因子(Notch1,Numb, Hes1)について神経幹細胞に対する役割をneurosphere法などによって検討した。また、併せて、神経幹細胞に強く発現するRNA結合蛋白質Musashi1について解析を行い、その結果を国際学術誌に発表した。その内容は次の通りである。Musashi1は、Notchシグナルの阻害因子であるm-NumbのmRNAに結合し、それらの蛋白質の発現量を制御していることが明らかにした。Musashi1は、リボソーム分画にも存在することから、Musashi1がm-Numb蛋白質の翻訳抑制を行っていることを明らかにした(Molecular and Cellular Biology誌)。また、Musashi1遺伝子欠損マウス由来の神経幹細胞をMusashi2遺伝子の発現を抑制するアンチセンス核酸アナログを含む培地にて培養したところ、神経幹細胞の増殖能が著しく低下することを発見した。Notchシグナルは細胞の分化・増殖を規定する因子であり、Musashi1は、そのシグナルを正に制御している働きを有し、神経幹細胞の性質に寄与しているものと考えられる。Musashi1とMusashi2が両方欠損したマウスを作成し、そのマウスの初期発生および神経組織を解剖学的に解析した結果、大脳皮質、海馬などの層構造の乱れ、細胞数の減少が観察され、これらの結果から胎生後期に致死になるものと推測された。さらに、Musashi1遺伝子の転写制御について解析を行ったところ、TCF-1、SOXファミリー、STATファミリーがMusashi1の転写制御領域に結合する可能性があることが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Okano H, Imai T, Okabe M.: "Musashi : Translational regulator of cell fate"Journal of Cell Science. 115. 1355-1359 (2002)
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[Publications] Cuadrado A, Garcia-Fernandez LF, Imai T, Okano H, Munoz A: "Regulation of tau RNA maturation by thyroid hormone is mediated by the neural RNA-binding protein musashi-1"Molecular Cellular Neurosciense. 20. 198-210 (2002)
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[Publications] 岡野栄之, 今井貴雄: "神経系の発生・分化とRNA"蛋白質・核酸・酵素「RNAの細胞生物学」. 48. 430-437 (2003)
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[Publications] 今井貴雄, 岡部正隆, 赤松和土, 岡野James洋尚, 岡野栄之: "神経分化を制御する神経系特異的RNA結合蛋白質"生体の科学 医学書院. 53. 84-90 (2002)