2002 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス可塑性における神経栄養因子の役割の欠損脳レスキュー実験による解明
Project/Area Number |
01J60066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北村 明彦 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脳由来神経栄養因子 / 大脳皮質視覚野 / シナプス可塑性 / シナプス長期抑圧 / ノックアウトマウス / 電気生理学 / ホールセル・パッチクランプ法 |
Research Abstract |
神経栄養因子とその受容体がシナプスの可塑性に関与していることを示唆する報告がなされている。しかし、大脳皮質視覚野においては外因性の神経栄養因子による影響しか調べられておらず、内因性の神経栄養因子が実際にどのような役割を果たしているのかは未だ不明である。そこで、内因性の神経栄養因子の作用を検討するため次の実験を行った。1.脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子欠損マウス(生後6〜10日齢)から大脳皮質視覚野スライス標本を作製し、II/III層の錐体細胞をホールセル・パッチクランプ法により-70mVに膜電位固定し、IV層刺激に対する興奮性後シナプス電位(EPSCs)を記録した。まず野生型とホモ欠損型において、シナプス前細胞の開口放出に差があるかを検討するためペアドパルス解析法を行った。その結果、ホモ欠損型では野生型に対して有意に開口放出確率が高かった。2.次に長期抑圧(LTD)を誘発する刺激を与えて、野生型とホモ欠損型との評価を行った。その結果、野生型ではLTDが生じなかったのに対し、ホモ欠損型では有意にLTDが生じた。1の結果を考慮すると、内因性のBDNFを欠損させた場合、開口放出確率が高いためにシナプス長期抑圧が生じやすくなったと考えられる。3.2の実験結果が、本当に内因性のBDNFを欠損させたことによる結果なのかを検討するため、今度はBDNFを補ってやるレスキュー実験を行った。記録外液にBDNFを加えて終濃度50ng/mlにしてやり、ホモ欠損型に対して同様の実験を行った。その結果、有意にLTDの誘発を阻止することができた。つまり、BDNFを欠損させたマウスで誘発されたシナプス長期抑圧は、BDNFを補ってやることで阻止することができた。以上の結果から、内因性のBDNFはシナプス長期抑圧を阻止していることが示唆された。
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