2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規癌浸潤・転移・血管新生阻害因子NK4による悪性腫瘍の遺伝子治療法の確立
Project/Area Number |
01J60069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
富岡 大策 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | NK4 / 血管新生阻害 / 血管内皮細胞 / 増殖抑制 / 細胞周期 / Akt / RB / cyclinD1 |
Research Abstract |
HGFに対するアンタゴニストとして調製したNK4は、血管新生阻害作用を合わせもつ2機能性分子である。私達はこれまでに、NK4が癌の浸潤、転移および腫瘍血管新生を抑制することにより肺癌、乳癌、胆嚢癌、膵癌といった難治性の悪性腫瘍に対して効果を示すことを明らかにしてきた。このときNK4はHGFによる癌の浸潤・転移を抑制するとともに腫瘍血管新生を抑制し、癌の成長阻害作用を示す。しかしNK4による血管新生阻害機構の詳細は未だ不明である。そこで、NK4による血管内皮細胞の増殖抑制に関与するシグナルの解析を行った。 bFGFによって培養ヒト血管内皮細胞のDNA合成は促進されるが、NK4を加えると内皮細胞のDNA合成は抑制された。この抑制は細胞の増殖を抑制していることを示しており、細胞周期のS期への移行を制御していると推測された。そこでS期への移行を制御しているFBのリン酸化を調べた結果、NK4はこれを阻害することがわかった。さらにFBのリン酸化に関与するcyclin D1の発現量を調べた結果、mRNAおよび蛋白質レベルで制御されていることが明らかとなった。そこで、更にcyclin D1を制御している上流を調べた結果、NK4はAktおよびその下流のGSK3-βのリン酸化を抑制していることがわかった。また、このような結果は、内皮特異的な機能であり、線維芽細胞などの他の細胞ではみとめられなかった。以上により、NK4はAkt/GSK3-β経路を抑制することにより、下流の細胞周期に関与するcyclin D1の発現量を抑制し、RBのリン酸化を阻害することにより内皮細胞の増殖を止めていると考えられる。今回の結果は、NK4の内皮細胞特異的なシグナル伝達機構のブロックを介して血管新生を阻害しているメカニズムを初めて明らかにし、NK4による制癌効果のメカニズムの一端が示されたと考える。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Daisaku Tomioka: "Inhibition of Growth, Invasion, and Metastasis of Human Pancreatic Carcinoma Cells by NK4 in an Orthotopic Mouse Model"Cancer Research. 61. 7518-7524 (2001)
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[Publications] 富岡 大策: "NK4/malignostatinによる腫瘍血管新生阻止作用とその制がん効果"最新医学 特集「血管新生の基礎と臨床」. 56. 1799-1808 (2001)