2003 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの老化制御遺伝子の網羅的探索と解析
Project/Area Number |
01J60083
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
外川 徹 東京都立大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 老化 / 酸化ストレス / DNA修復 / Cyclin H / GSシステム / キイロショウジョウバエ |
Research Abstract |
酸化ストレスは老化の主要な原因の一つと考えられている。本研究は老化の遺伝的基盤を包括的に理解するために、ショウジョウバエを用いて酸化ストレス耐性に関わる遺伝子を網羅的に探索し、そのうち主要なものについては機能解析を行うことを目的としている。 酸化ストレス耐性を効率良く測定するために、高酸化ストレス下でのショウジョウバエの生存期間を自動的に測定する系を確立した。この測定系と当研究室で確立したGene Search(GS)システムを用いて酸化ストレス関連遺伝子の全ゲノム的なスクリーニングを行った。GSシステムでは、酵母転写因子GAL4の標的配列UASを含むGSベクターがゲノムにランダムに挿入された系統を、GAL4系統と交配させることにより、F1世代でベクター挿入部位に隣接する遺伝子を時期特異的に強制発現させ、その遺伝子機能を解析することができる。現在までに、約3000系統の解析が終了し、遺伝子強制発現により酸化ストレス耐性が上昇する系統を数系統得た。 それらの系統のうち、GS9043はCyclin H(CycH)の強制発現を引き起こす。CycHは他の複数のタンパク質とともにTFIIHを構成し、RNAポリメラーゼIIの基本転写因子として機能する。また、TFIIHはDNA修復に関わることも示されている。ショウジョウバエCycH突然変異体は酸化ストレス高感受性を示し、逆にCycH強制発現系統は酸化ストレス耐性を示したことから、CycHが酸化ストレス耐性に寄与することが明らかとなった。さらに、CycH強制発現体は野生型に比べて長寿命を示した。また、CycH突然変異体の翅成虫原基を過酸化水素で処理すると、野生型より多くの細胞死が誘導された。これは、CycHの欠損によりDNA修復能が低下したためと考えられる。これらのことから、酸化ストレス耐性および寿命にDNA修復が深く関わることが示された。
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