2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J60092
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
岸本 憲人 国立遺伝学研究所, 生物遺伝資源情報総合センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遺伝子発現 / 翻訳制御 / 母性mRNA / RNA結合タンパク / 線虫 |
Research Abstract |
線虫C. elegans卵は受精後不等分割を行い、細胞の運命決定には卵割に伴って活性化・局在化する母性因子が重要な働きをしている。このとき、最も重要なメカニズムが母性mRNAの翻訳制御である。例えばNotchレセプターglp-1のmRNAは全割球に存在するが、タンパクは前側割球のみ検出される。この制御には本研究室で単離されたpos-1が重要で、POS-1はジンクフィンガータンパクであり、初期胚後部割球の細胞質に局在し、生殖顆粒の構成タンパクの一つである。POS-1は複数のRNA結合型タンパクと相互作用し、そのうちの一つであるPIP-1はPOS-1と拮抗的にglp-1 mRNA翻訳を制御する。pos-1変異とpip-1変異の表現型は共通部分もあるが非常に多岐にわたることから、複数のタンパクの組み合わせによる翻訳制御の"fine tuning"の仕組みが示唆された。POS-1およびPIP-1と結合するRNAの同定およびその分子機構の解明、さらにPOS-1と相互作用するタンパクについても同様の解析を行うことにより線虫初期胚発生過程の遺伝子発現の全貌を明らかにすることを目的としている。 まず、線虫の初期胚発生における翻訳制御の一例として、酵母tri-hybrid法によりPOS-1およびPIP-1が直接glp-1 mRNAの3'UTR(非翻訳領域)と相互作用することにより翻訳制御を行っていることを明らかにした。次いで、胚発生に必須な他のRNA結合型タンパクも種々の母性mRNAの3'UTRと相互作用することを認め、これらのタンパクの組み合わせによる翻訳制御の"fine tuning"を明らかにした。また、POS-1およびPIP-1が相互作用する母性mRNAの3'UTRの比較、点変異導入実験からそれぞれの結合配列を同定した。最後に、ポリ(A)鎖の長さは翻訳効率を高めることが知られており、これらのタンパクはmRNAの安定性に関与するポリ(A)結合タンパクと相互作用することを見いだした。以上の結果から、POS-1をはじめとするRNA結合型タンパクは、mRNA3'UTR内の特異的配列に結合し、ポリ(A)鎖の長さを調節することにより翻訳を制御するものと考えられる。
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