2002 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素誘導アポトーシスにおけるHIF-1複合体の機能
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01J60098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 裕之 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 低酸素 / HIF-1 / アポトーシス / 血管新生 |
Research Abstract |
HIF-1複合体は、固形腫瘍内部で認められる低酸素環境下での血管新生、細胞死の制御に重要な役割を果たしている。現在までにHIF-1αのリン酸化状態が細胞生死の制御に重要であることが明らかになっている。固形腫瘍細胞は低酸素に曝され続けることにより、しばしば低酸素による細胞死に耐性を獲得し、癌の悪性化に寄与することが知られているが、そのメカニズムは明らかではない。そこでヒト乳癌MCF-7細胞を用いて、低酸素/再酸素化をくり返すことにより低酸素耐性細胞株の樹立を試みた。親株では低酸素処理60時間でほぼ死滅するが、耐性株では7割以上の生存が認められ、アポトーシスに特有な核の凝縮も抑制されていた。その際のHIF-1α、p53の発現を調べたところ、耐性株では低酸素によるp53の発現が減少しており、さらにはHIF-1αの低リン酸化が減少していることが明らかになった。以前までの研究により、HIF-1αの低リン酸化はp53の安定化、アポトーシス誘導に重要であることを示していることから、固形腫瘍が低酸素に耐性を獲得する際には、低リン酸化型HIF-1αの減少が重要であることが示唆された。さらに耐性株では細胞の生存に重要である高リン酸化型HIF-1αは発現していることから、この耐性株では低リン酸化型HIF-1αの発現を選択的に減少させるメカニズムが存在するものと考えられる。 今後はこの耐性のメカニズムを解明するとともに、高リン酸化型HIF-1αが関与することが知られている血管新生に着目し、研究を進めていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Sasaki T, Suzuki H et al.: "Lymphoid Enhancer Factor 1 Makes Cells Resistant to Transforming Growth Factor beta-induced Repression of c-myc"Cancer Research. 63. 801 (2003)
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[Publications] 鈴木裕之, 宮園浩平: "TGF-βシグナル伝達と疾患"実験医学 増刊. 21. 184 (2003)