2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本における第四紀以降のイノシシの形態に基づく形態変化と系統分類
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01J82203
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
藤田 正勝 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | イノシシ / 縄文時代 / 文献データベース / 分布 / 変遷 / 日本列島 |
Research Abstract |
昨年度に続いて、奈良文化財研究所が所蔵する全国の報告書から、哺乳動物遺存体(特にイノシシとシカ)が出土している縄文時代の遺跡を抽出し、縄文時代のイノシシの年代別分布を文献調査した。総計6000件以上の報告書を調査し、動物遺存体の報告がされている1000件以上の文献の概要をデータベース化した。 同一遺跡でも層準や地区によってイノシシやシカの出土状況が異なることがある。このようなことが把握できるように、今年度はさらに、同一遺跡内でもイノシシやシカの出土の年代ごとの有無が確認できるデータベースを構築した。昨年度同様、出土動物や出土層準、年代の確認作業は、報告書によっては明確に記載されていないことも多く、調査に時間がかかり、現在も進行中である。このようなことから、形態変化の研究まで進んでいないが、縄文時代の各時期におけるイノシシの分布の変遷が、徐々に明らかになりつつある。明確ではないが、縄文時代早期または前期から晩期にかけて、北陸や東北地方北部までイノシシの分布が拡大したようで、温暖化による環境変化との関係が考えられる。また、研究者との議論の中で、東北地方を中心に積雪地帯にイノシシが分布しなくなるのは近世になってからのことであるがわかった。人類の活動と関連するかどうかは、形態的に検討できていないのでまだ未確認である。 今後、さらに正確な情報を更正・蓄積し、情報処理することによって、日本の全国的なイノシシの分布や、シカなど他の狩猟獣との出土比率を考察することで、イノシシの自然分布の変遷、家畜化の問題などを論じていく上で、重要な基礎データとなる。また、目的の遺跡を検索して、効率よく調査できるデータベースとして利用可能で、このデータベースをインターネット上に公開し、ほかの研究者にでも効率的に情報が更新できるよう、現在計画している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 本郷一美, 藤田正勝, 松井章: "古代遺跡から出土したニホンザルに基づく分布の変遷"Asian Paleoprimatology. vol.2. 1-12 (2002)
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[Publications] 藤田正勝, 松井章: "島添大里グスク出土の動物遺存体"大里村文化財調査報告書第4集 大里城跡. 93-102 (2003)