2002 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的手法を用いたチンパンジーの社会構造の比較と種分化に関する研究
Project/Area Number |
01J82604
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田代 靖子 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | チンパンジー / ゴリラ / 社会構造 / 遺伝的変異 / 分子生物学 / ミトコンドリアDNA |
Research Abstract |
本研究は、1.チンパンジー社会の下部構造であるパーティーの形成パターンとその形成要因を明らかにすること、2.チンパンジー生息域東南端であるタンザニアにおいて、個体群間・個体群内の遺伝的変異を明らかにするとともに、チンパンジーの種分化について明らかにすること、の2つを目的としている。今年度は、これまでに採集された試料の分析をおこなった。 非侵襲的に採集された試料(チンパンジーの糞・毛)からDNAを抽出したのち、ミトコンドリアDNAのコントロール領域についてシークエンスをして、個体群間・個体群内の変異を調べるもととなるデータを集めた。その実験の過程で、ヒトDNAの混入がチンパンジーDNAの目的領域をシークエンスする際に阻害原因となることがわかり、ヒトDNAを試料から除く方法について、新しい実験系を考案した。 非侵襲的試料は、野生個体を捕獲しないでDNAを採集し、遺伝的解析がおこなえる画期的な方法であるが、血液から抽出したDNAに比べて濃度が低い。また、採集時の状況によっては、ごく微量のDNAしか抽出できない場合もある。そのような試料へヒトDNAが混入すると、チンパンジーDNAとともにヒトDNAがPCRで増幅されるために、シークエンスでチンパンジーDNAの配列を読む時に邪魔になる。そこで、PCRの前に制限酵素でヒトDNAだけを切る配列を見つけ、ヒトのPCRを途中で終わらせることにした。この方法で、ヒトDNAが混入した試料でも、ヒトDNAを除いて、分析を進められることがわかった。この内容については論文にまとめているところである。
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