2002 Fiscal Year Annual Research Report
異なるグルタミン酸受容体を介するカルシウムシグナルの生理的意味と識別機構
Project/Area Number |
01J83802
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 正晃 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 代謝型グルタミン酸受容体 / カルシウムシグナル / ノックインマウス |
Research Abstract |
培養細胞発現系において、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプの一つであるmGluR1の細胞内領域にアミノ酸点変異(Asp→Thr)を導入すると、その受容体刺激による細胞内カルシウム応答が一過性上昇型からオシレーション(周期的増減)型へと変化する。本研究では脳におけるカルシウムオシレーションの役割を個体レベルで解析するために、ジーンターゲティングによりmGluR1遺伝子にオシレーション型の点変異を導入したマウス(mGluR1ノックインマウス)を作製し、その表現型の解析を行った。mGluR1ノックインマウスより培養小脳プルキンエ細胞を調製し、mGluR1を介する細胞内カルシウム動態の変化をカルシウム感受性色素を用いたイメージングにより観察したところ、mGluR1ノックインマウスではオシレーション型の点変異を導入したにも関わらず、そのカルシウム応答のパターンは野生型と比べて差が見られなかった。そこで本年度はより鋭敏な解析を行うために培養プルキンエ細胞におけるmGluR1を介した内向き電流の定量的解析を行った。mGluR1ノックインマウスから調製した培養プルキンエ細胞における内向き電流は野生型に比べ、低容量のアゴニストに対する反応が消失していた。また30秒間のアゴニスト刺激後の脱感作の程度も野生型に比べて有意に減少していた。従って、培養細胞発現系では細胞内カルシウム応答パターンの変化を引き起こすmGluR1の点変異が生体内においてはアゴニスト感受性と脱感作の変化を引き起こすことが明らかとなった。筆者は現在、これらの知見を論文にまとめ、投稿準備中である。 なお、本研究の電気生理学的手法による解析は、金沢大学大学院医学研究科の狩野方伸教授らとの共同研究によるものである。
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