1990 Fiscal Year Annual Research Report
日独近代化過程の比較文化的研究ー科学技術による文化構造の再編と伝統保持の問題
Project/Area Number |
02305002
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
横田 ちゑ 千葉大学, 教養部, 教授 (00009359)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内村 博信 千葉大学, 教養部, 講師 (30193907)
三宅 晶子 千葉大学, 教養部, 助教授 (50157608)
長田 謙一 千葉大学, 教養部, 助教授 (20109151)
山内 正平 千葉大学, 教養部, 助教授 (60092110)
田中 健夫 千葉大学, 教養部, 助教授 (20092067)
|
Keywords | 1920年代 / 大衆文化 / 感覚変容 / 西洋受容 / 伝統保持 / アヴァンギャルド / モダンデザイン / 近代建築 |
Research Abstract |
1)近代とは何かを問う議論のなかで、テクノロジ-の意味を再考し、整理することによって、ブルジョア的個人主義から大衆化へと移行する近代化の意味が段階的に明確にされることが確認された。日本の近代化の問題も、テクノロジ-と権力という図式で捉えれば、近代化が国家的課題であったことがよく理解される。19世紀的な西洋近代を日本に置き換えることができるかどうかはさらに来年度の課題として持ち越された。 2)日本における近代的都市生活(西洋的な都市、生活様式等)の発生、展開と伝統保持の問題を、戦後の浦安が都市のインフラストラクチャ-、町並み、住宅の外観、間取り、住民の生業の変化等において変わりゆく姿を通して考察した。例えば、洋風応接間、子供部屋の誕生等、和風に洋風を取り込む独自の様式が誕生していく。 3)この現象は、日本の近代デザインにも当てはまる。斉藤佳三のリズム模様と称するカンディンスキ-風のデザインの浴衣地が商品化され、浅草の舞台で西洋モダンの象徴として使用されたりする。演歌にヴァイオリンという和洋混交の取り合わせも同様の近代化現象であるが、この和洋折衷主義が現在の流行歌にまで継続する。 4)斉藤佳三、山田耕作に続く、1920年代のベルリンへの留学生(村山知義、永野芳光、和達知男)が、日本の前衛的芸術運動を促進した。彼らの滞在は船舶での渡航期間を含めて1年くらいのものであったが、期間が短いのに比してヨ-ロッパの芸術家たちとの幅広い交流が見られ、ここにも急激な日本の近代化現象の一端がある。ドイツから帰国した村山が「マヴォ」を刊行する1924年は、日本のダダイズムが実質的に終息する時期でもあり、日本の前衛芸術運動の分水嶺にあたる。辻潤、高橋新吉らが推進役となった日本のダダイズムは、アナキズム、虚無主義が同居し、そこに老荘思想や禅的な仏教思想が入り交じって、特異な思想状況を形成している。
|
Research Products
(36 results)
-
[Publications] 浅井 健二郎: "ベルリン市壁の第四代目がこけて、さて?" DAAD友の会. (1991)
-
[Publications] 五十殿 利治: "日本未来派の衝撃ー新発見のパリモフ作品について" 美術館ニュ-ス(東京都美術館). 418. 4-5 (1990)
-
[Publications] 五十殿 利治: "芸術批評の時代" 日本モダンズその興隆(ゆまに書房). 6. (1990)
-
[Publications] 谷川 道子: "終わりなきファウスト" ミュンヘン・カンマ-シュピ-レ東京公演パンフレット. 42-53 (1990)
-
[Publications] 中澤 英雄: "カフカにおける「ユダヤ人」問題" へるめす(岩波書店). 25. 54-63 (1990)
-
[Publications] 中澤 英雄: "カフカ『万里の長城』における民族、国家、宗教" 思想(岩波書店). 796. 112-127 (1990)
-
[Publications] 中澤 英雄: "カフカのアフォリズム(上)" 東京大学外国語科研究紀要. 37ー1. (1990)
-
[Publications] 中澤 英雄: "カフカのアフォリズム(下)" 東京大学比較文化研究. 29. (1990)
-
[Publications] 長田 謙一: "ワイマ-ル工芸学校とハンリィ・ヴァン・ド・ヴェルド" 現代の眼(国立近代美術館). 426. 2-5 (1991)
-
[Publications] 長田 謙一: "イカロスの画家たち" ちば(千葉県教育文化研究センタ-). 24. 118-128 (1991)
-
[Publications] 長田 謙一: "フランツ・チゼックと20世紀美術" 美育文化(美育文化協会). 40ー11. 18-21 (1991)
-
[Publications] 桧山 哲彦: "乱世と定型" 風. 4月号. (1990)
-
[Publications] 桧山 哲彦: "「エスタ-ラ化」ーーマ-ラ-の時代とウィ-ン世紀転換期" 月刊都響. 10月号. (1990)
-
[Publications] 藤谷 陽悦: "(連載)近代和風を探る" 建築知識(3、6、9、12、3). 32/33. (1990-′91)
-
[Publications] 藤谷 陽悦: "近代の住宅をつくった建築家たち 我が国の公営住宅の先駆「同潤会」" 新住宅(12月号). 520. 112-114 (1990)
-
[Publications] 古内 博行: "ECセット・アサイド措置の導入と問題点" 農業と経済. 1月号. 55-61 (1991)
-
[Publications] 細川 周平: "西洋音楽の日本化・大衆化" ミュ-ジック・マガジン(連載). 224ー233. (1990/91)
-
[Publications] 増谷 英樹: "方法としての都市史" 歴史学研究. 612. 1-5 (1990)
-
[Publications] 増谷 英樹: "激動の中のリンツ会議" 歴史学研究. 619. 18-21 (1991)
-
[Publications] 三宅 晶子: "壁の解放とドイツの作家たち" 新潮. 87ー5. 168-169 (1990)
-
[Publications] 三宅 晶子: "クリストフ・ハイン「龍の血を浴びて」(書評)" マリ・クレ-ル. 2月号. 243 (1991)
-
[Publications] 三宅 明正: "「逆コ-ス」と社会" 日本同時代史(歴史学研究会編). 2. 191-222 (1991)
-
[Publications] 三宅 明正: "地方自治法の施行と八王子市議会" 八王子市議会史 記述編(八王子市). II. 5-234 (1990)
-
[Publications] 孟 真理: "Symbolisches oder allegorisches Leitmotiv im “Zauberberg"?" 千葉大学教養部研究報告B. 23. (1990)
-
[Publications] 山内 正平: "辻潤とダダ精神" 千葉大学教養部研究報告A. 23. (1990)
-
[Publications] 伊藤 俊治: "裸身の変容と写真のまなざし" 朝日出版社, 236 (1991)
-
[Publications] 長田 謙一(共著): "「日本の眼と空間」展カタログ" セゾン美術館, (1991)
-
[Publications] 長田 謙一(共著): "「チゼック展」カタログ" 子どもの城+武蔵野美術大学, (1991)
-
[Publications] 長谷 正人: "悪循環の現象学 行為の意図せざる結果をめぐって" ハ-ベスト社, 170 (1991)
-
[Publications] 桧山 哲彦: "現代哲学の冒険(11).技術と遊び" 岩波書店, (1990)
-
[Publications] 藤谷 陽悦(共著): "日本建築学会百年史 1886ー1985" 日本建築学会, (1990)
-
[Publications] 藤谷 陽悦(共著): "東京駅と辰野金吾" 東日本旅客株式会社, (1990)
-
[Publications] 細川 周平: "レコ-ドの美学" 勁草書房, 507 (1990)
-
[Publications] 丸山 純(共著): "信州須坂の町並みーー伝統的建造物群保存対策調査" 須坂市教育委員会, 90 (1991)
-
[Publications] 三宅 明正・若桑 みどり編: "九人の語る戦争と人間" 大月書店, 332 (1991)
-
[Publications] 萬木 康博: ""ねじ釘の画家"柳瀬正夢" 武蔵野美術大学美術資料図書館, 208 (1990)