1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02451056
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
松沢 亜生 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター・研究指導部考古計画研究室, 室長 (50090379)
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Keywords | 旧石器 / 石器製作技術 / 製作経過復原 / 瀬戸内技法 / 面関係(切り合い) / 製作追試実験 / 接合資料 / 割処理 |
Research Abstract |
本年度の検討対象は瀬戸内技法による石器づくりの経過復原と製作上の技術的な問題点を洗いだし、実験を通じて確かめることにあった。対象資料を奈良ー大阪両府県にまたがる二上山山麓に分布する諸遺跡の、また発掘資料として奈良県桜ケ丘遺跡の一部を扱った。 瀬戸内技法は命名の出発点となった大阪府国府遺跡で復原された剥離経過を骨子とし、二上山周辺の遺物から帰納された経過で補足された。しかし本技法の認識をやゝ片寄り、二上山タイプを典型とみなす研究風調がある。それは単に出発点となる石核用の剥片素材の準備状況の違いにあるだけである。その素材準備の多様性は目的の翼状剥片を剥ぎとるチャンスの選び方、またそのための準備の仕方にあり、多様性を生むのは当然のことである。国府タイプがむしろ一般的な対処法であり、二上タイプはその一部を代表するものと位置づけられる。多様性は製作者の剥離技術の幅の広さを示すもので、典型扱いは研究者側の類形化に原因する研究態度の問題である。 使用石材サヌカイトはすでに実験的にも、割り易い方向性を持つことを確かめているが、その方向性の与える影響は石核用制片ないしは板状剥片を得る段階に強く現われる。その実態の把握につとめた。一方その方向性は、翼状剥片を剥離する過程でも無関係ではない。翼状剥片の形をきめる打面側の成形と翼状剥片決定打撃は、それを切る関係にある。方向性の影響を受け、大きく変形してしまう作品もある。 また最終年度にあたるため、石刄技法・細石刄技法が同一石材の中に同居する北海道新道遺跡の接合資料について、接合状況を含めて測定を行った。その剥離経過は少くとも割り処理をすすめる彼らの石割に対する考え方、すなわち剥離チャンスの選び方またそのための準備処置に十分伺える好資料で、初年度・次年度のデータを補うことができた
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