1990 Fiscal Year Annual Research Report
単食性ハバチの同所性寄主転換と生態種形成機構に関する遺伝・化学生態的研究
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02454052
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
内藤 親彦 神戸大学, 農学部, 助教授 (70031226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田井 晰 姫路工業大学, 工学基礎研究所, 教授 (20029961)
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Keywords | 生態種(host race) / 寄主特異性 / 産卵誘引物質 / 同所的寄主転換 / 選択交尾 / 生殖隔離 / 遺伝子流入 |
Research Abstract |
今年度の研究成果は以下の通りである。(1)ニホントガリシダハバチの2生態種(ジュウモンジシダ生態種およびイノデ生態種)は、成虫の寄主選択に異なる化学物質を利用しており、それらは共に親油性の強い、弱揮発性の中性化学物質であることをほぼ明らかにした。化学物質の同定は2年次の課題である。(2)両生態種の遺伝的変異性を明らかにするために、幼虫体液の各種酵素活性を比較した結果、エステラ-ゼおよびACPHにおいて生態種間に差異がみられた。染色体の比較では、現在のところ生態種間に差異は発見されない。(3)生態種形成にともない、元の生態種(ジュウモンジシダ生態種)の雄と、派生生態種(イノデ生態種)の雌との間に急速に交配阻止現象が起こり、元の生態種から新しい生態種への遺伝子流入が阻止され、この結果派生生態種の遺伝的独立性が確立される仕組みのあることがわかった。この一方向的選択交尾現象の発現には、性フェロモンの変化と、それへの対応が原因していることが推察された。2生態種の性フェロモンの同定は2年次の課題である。(4)寄主転換を伴う同所性生態種形成の実験的再現を目指し、元の生態種から新しい生態種を作り出す試みの第一段階として、ジュウモンジシダ生態種雌とイノデ生態種雄の交雑を行った結果、受精卵由来のF_1雌幼虫はイノデでは発育を完了するが、ジュウモンジシダでは発育不良により死亡し、野外における生態種形成の移行地帯の幼虫とよく似た性質を示した。(5)野外個体群の生態種形成の分布実態調査では、淡路島のイノデ幼虫はジュウモンジシダ不食でイノデ生態種となっているが、小豆島のそれはジュウモンジシダで生育を完了し、寡食性状態にある事実がつけ加わった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Tikahiko Naito: "Sympatric host race formation zone in the fern sawfly <Hemitaxonus>___ー <japonicus>___ー complex" Evolution.
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[Publications] Akira Tai: "Chemicals controlling the discrimination of two host races in the fern sawfly <Hemitaxonus>___ー <japonicus>___ー complex" Insect Physiology.