1992 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性心疾患の合成ペプチドを用いた新しい治療薬の開発
Project/Area Number |
02557038
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢崎 義雄 東京大学, 医学部(病), 教授 (20101090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 裕久 ヤマサ醤株式会社, 研究開発部生物第2研究室, 研究員
杉 正人 ヤマサ醤油株式会社, 研究開発部生物第2研究室, 主任
山崎 力 東京大学, 医学部(病), 医員
世古 義規 東京大学, 医学部(医), 助手
山沖 和秀 東京大学, 保健センター, 講師 (70182409)
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Keywords | RGD配列 / 急性心筋梗塞 / 心筋虚血再潅流 / 細胞間接着分子 / 抗体治療 / DD11a,b,c / CD54(ICAM-1) / CD62(GMP-140) |
Research Abstract |
虚血性心疾患発症の引き金となる凝固系活性化は、血管内に露出したコラーゲンなどに存在する特異的なアミノ酸配列(Arg-Gly-Asp:RGD)を血小板が認識して接着することにより始まる。また、心筋梗塞急性期にPTCR、PTCAを行ない、再潅流が得られた時に発生する心筋血再潅流障害の発症要因として最も重要な白血球の浸潤には、細胞間接着分子が強く関与しており、細胞間接着分子の一部にもRGD配列が認められることが明らかとなってきた。昨年度までに行なった、ラットにおける心筋虚血モデル作成法の確立、心筋虚血再潅流時の浸潤白血球における細胞間接着分子の発現、虚血再潅流部血管内皮細胞におけるCD54(ICAM-1)の発現増強の解析に続いて、今年度は、細胞間接着分子に対するモノクローナル抗体を投与すると、心筋障害の減少が認められると同時に、心筋組織におけるICAM-1の発現増強の抑制と好中球の浸潤の減少がみられることを明らかにした。このことより、心筋虚血再潅流障害に細胞間接着分子が重要な役割を担っていることが直接証明された。さらに、培養ヒト臍帯静脈とヒト好中球を用いたin vitroの系において、hypoxia/reoxygenation刺激により細胞間接着分子の一つであるCD62(GMP-140)がICAM-1より早期に臍帯静脈に発現し、GMP-140に対するモノクローナル抗体により好中球の接着が 阻害されることを見いだし、複数の細胞間接着分子が心筋虚血再潅流障害に関与していることが明らかとなった。RGD関連ペプチドは、血小板による血栓形成を抑制するばかりでなく、細胞間接着分子の機能をも抑制する可能性が高い、このことを我々が確立したラットの心筋虚血再潅流モデル及びin vitroのhypoxia/reoxygenationモデルにおいてさらに検討し、接着分子に対する抗体により治療の開発と並行して、より安全性の高いRGD関連ペプチドによる治療法の確立を目指することが次期の研究主題となる。
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