1990 Fiscal Year Annual Research Report
ニュルンベルク国際軍事裁判における「人道に対する罪」概念の研究
Project/Area Number |
02610185
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Research Institution | Tokyo Jogakkan Junior College |
Principal Investigator |
清水 正義 東京女学館短期大学, 文科, 専任講師 (20216104)
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Keywords | ニュルンベルク裁判 / 戦争責任論 / 戦争犯罪 / 第二次世界大戦 / ナチズム(ファシズム) |
Research Abstract |
今年度の活動はニュルンベルク国際軍事裁判に関する基礎的資料、文献の収集と整理を中心とした。国際軍事裁判記録ならびにドイツ現代史に関する重要資料集を入手するとともに、当該問題について今日までに発表された研究文献、論文を収集した。収集資料、文献の分量はおよそ百点余りである。 収集資料中最も重要な裁判記録は全42巻に及ぶ大部のものであるが、今年度はまず国際軍事裁判所条例、起訴状、判決文中に見られる「人道に対する罪」に関わる記述を検討し、同罪の概念内容を明確にすることに努めた。その結果同罪が「平和に対する罪」「通例の戦争犯罪」などの他の訴因と異なり、ある意味で国内法規違反と同様の内容を有すること、従ってまた同罪に関わる戦争犯罪裁判が戦後の西ドイツ社会に受容され、今日に至るまで継承されてきた素地が、同罪概念の中に本来存在していたことを明らかにすることができた。 裁判記録による同判概念の検討とともに、ニュルンベルク国際軍事裁判の沿革、経過、帰結ならびに法的政治的問題点などについて関連文献の整理を行った。ニュルベルク裁判について東京裁判と同様、様々な批判がありうるが、しかし西ドイツにおいて同裁判批判は日本における東京裁判批判ほど強くはない。その背景のひとつに、ニュルンベルク裁判判決において「人道に対する罪」の占める位置が高かったこと、しかも同罪を裁判所の管轄に含めることについての法的批判が比較的希薄であったことなど、いくつかの注目すべき傾向も認められる。 以上のような研究成果を基に、今後さらに裁判記録の検討を続け、「人道に対する罪」概念の内容と特徴を明らかにし、そのことが戦後西ドイツ国民の戦争責任観に及ぼした影響を測定する方向で研究報告をまとめる予定である。
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