1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02610199
|
Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
鎌田 良二 甲南女子大学, 文学部, 教授 (40098447)
|
Keywords | 浪花聞書 / 新撰大阪詞大全 / 社会言語学 / 近畿周辺域方言 |
Research Abstract |
平成2年度から平成4年度までの3年間のうち、本年度の実績は次の通りである。研究課題のうち史的面については、『浪花間書』(文政2年・1818年)『新撰大阪詞大全』(天保12年・1841年)の語彙につき近畿周辺地域の富山・石川・福井・鳥取・岡山・徳島の各県それぞれ県内中心都市と県内7地点につき臨地調査をした。その結果を総括的に記せば江戸時代の大阪方言語彙約900語のうち、現在、語形変化せずにそのまま残って使用しているものが約半数あり、語形をインフォ-マントが「知らない」と答えたもの4分の1。意味変化しているもの4分の1であった。語形を知らないものは鳥取・岡山に多く、意味変化したものは富山・石川に多い。福井・徳島は語形変化せずそのまま残っているものが多い。 次に、研究課題のうち社会言語学的研究の面の臨地調査の結果をごく総括的に記せば次の通りである。まず、年令層でいえば当然ながら若年層に江戸時代語が残っているものは少なく老年層に多いことは言うまでもない。同じように残っているものが多いのは低学歴層でその反対の高学歴層には少なくなる。これは同一地点のことで、都市部と郡部とを比較すれば都市部に少なく郡部に多い。さらに今後は性老・職業老などについて調査したい。 以上はごく概括的で抽象的な言い方で詳しくは数字・図・表によって示すべきだがここに語形変化の1例をあげる。『新撰大阪詞大全』に「いれるとは酒を呑むこと」とあるが、現在、酒を飲むことを「いれる」とは言わないが「オマエ朝カラハイっテルノカ(朝から酒を飲んでいるのか)」と言う。「入れる」は使わないが「入る」と語形変化した。同じ意味での語形変化である。
|
Research Products
(2 results)