1991 Fiscal Year Annual Research Report
国際法上の自衛権ー国家実行から見た自衛権の現代的変遷
Project/Area Number |
02620009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
位田 隆一 京都大学, 法学部, 教授 (40127543)
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Keywords | 自衛 / 武力行使禁止 / 緊急性 / 比例性 / 武力攻撃 / 安全保障理事会 |
Research Abstract |
本年度は、自衛に関する国家実行一覧表及び自衛権関係文献リストをほぼ作成し終えた。これらの分析はまだ完全に終了したわけではないが、前2年と本年にわたる研究に基づいて、下記のような項目で理論分析枠組を構成することができる。 I.前提的考察 1.国内法上の正当防衛と国際法上の自衛の比較 2.武力不行使原則の成立前後における自衛の自張の法的要件の相違 II.自衛権行使の外在的制限要素 1)国際関係の変動(冷戦の後焉) 2)武力行使を許容する新しい権原の登場(民族自決権、人道的干渉、人権保護) 3)科学技術の発展(核兵器の実際的軍事的価値ー抑止力) III.自衛権行使の内在的制限要素 1)前提条件としての武力攻撃の定義(小規模な武力行使、当事国の戦闘意図、武力によらない「侵略」の可能性) 2)緊急性の評価(国連安全保障理事会の判断権限) 3)比例性の要件(量的比例ではなく質的比例) IV.結論的考察 この約20年間の自衛権の援用事例は極めて多岐にわたっている。また、武力行使禁止の原則が一般に強行規範と考えらているにも拘らず、武力の使用は瀕発しており、とりわけII.2)やIII.1)の問題は、この原則自体の存在意義を左右する可能性がある。従って上記の様な内外両面での制限要素を明らかにすることによって、現代国際法上の自衛概念を実証しえたと考える。 今後この構成にしたがって順次成果を発表して行く予定である。(なおI.2.及びIII.3)の一部は既に成果を発表している。)
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