1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02620024
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大出 良知 静岡大学, 人文学部, 教授 (50115440)
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Keywords | 刑事弁護 / 起訴前弁護 / 弁護権 / 接見交通権 |
Research Abstract |
本年度は、理論的再検討の現実的基盤の有無、及び弁護活動の実践的可能性の限界を確認するため、わが国における刑事弁護の実情を、実証的、総合的に把握することに力点をおいてきた。 具体的には、第一に、現実に進行している事件における弁護活動の実情を、記録によるだけでなく、法延傍聴や弁護団会議への出席等によって把握しようとした。対象とした事件としては、最高裁で死刑判決が破棄され、名古屋高裁に差し戻されていた山中事件、福井地裁で一審無罪になった前川事件、再審請求棄却決定に対する異議審の審理が名古屋高裁で行われている名張事件、最高裁で上告が棄却され死刑が確定した諸橋事件、そのほかに起訴前弁護活動が注目を集めた名古屋バラバラ殺人事件、金沢保険金「殺人」事件等がある。 第二に、1990年4月に発足した日弁連の刑事弁護センタ-の活動状況について調査を行った。 第三に、弁護士会として刑事弁護の充実を目指す動きが全国的に広がっているが、その最先端をいっている福岡県弁護士会が1990年12月から開始させた当番弁護士制の実情についても調査した。 以上の調査研究により、刑事弁護の実践主体である弁護士、弁護士会の刑事弁護の充実へ向けた体制づくりが本格化してきていることが明らかになった。しかし他方で、理論的に弁護活動の法的可能範囲を確認する作業が遅れており、警察・検察、裁判所によって形成されてきた不動な慣行に十分対抗できていない。そこで、憲法制定過程にまで遡った刑事弁護に対する要求内容を確認する作業もはじめている。 さらに、起訴前弁護を中心にわが国よりはるかに進んだ刑事弁護が行われているアメリカ、イギリスについて検討を開始した。
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