1990 Fiscal Year Annual Research Report
スペインの労働者協力組合における経営参加とECの社会労働政策に及ぼす影響
Project/Area Number |
02630034
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐藤 誠 立命館大学, 国際関係学部, 専任講師 (70205962)
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Keywords | 労働者協同組合 / EC / モンドラゴン / EC社会憲章 / ポスト・フォ-ディズム / スペイン / 自主管理 |
Research Abstract |
研究対象事例としたスペイン・バスクのモンドラゴン協同組合複合体は、92年統合に備えて先端技術の開発を付属の研究開発センタ-で進める一方,スウェ-デンのカルマル方式など国際的先進例に学びつつ従来のベルコトコンベア方式からの離脱をめざした労働再編成に取り組んできた。それは職務再評価を伴うために、労働者内部の徹底した議論を求めるものであった。労働者所有・管理企業としてポスト・フォ-ディズム的生産システム、労働組織を模索する一つの試みであったと言えるであろう。 また92年統合に向けて,技術開発、雇用促進などにおける同複合体とバスク自治政府の協力は一層進んだ。ネイションステイトの比重が相対的に低下する中で、ロ-カル(バスク)がエスニックなアイデンティティ-に拠りつつ、リ-ジョン(EC)と直接関わっていきつつある側面の一つの反映ともいえよう。バスクとの結びつきを強めていることは、モンドラゴン協同組合にとって組合員が自分たちだけの福祉をめざす「労働者エゴイズム」に陥らずに自分たちの獲得した成果を広く社会に還元していく社会性の拠り所をなしていると言える。 ECレベルで労働者協同組合をみてみると、従業員参加についてはEC社会憲章のみならず、欧州会社法案、フレデリング法案などでも論じられているものの、労働者所有については雇用促進など限られた関心しかみられない。労働者所有についての議論を深めることは、労使の対立的評価の中で停滞している労働者参加の認識も高めると考えられ、モンドラゴンなどの試みの示唆するものは大きい。
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