1990 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄配位子を持つ欠電子性dーおよびfー遷移金属錯体の新展開
Project/Area Number |
02640476
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
巽 和行 大阪大学, 理学部, 助手 (10155096)
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Keywords | 遷移金属硫黄錯体 / クラスタ-化合物 / タンタルスルフィド錯体 / ニオブチオラ-ト錯体 / バナジウムチオラ-ト錯体 / ニオブスルフィド錯体 / 炭素硫黄結合切断反応 / 7配位錯体 |
Research Abstract |
欠電子性遷移金属としてニオブ,タンタル,バナジウム,ウラン等を取り上げ,当初の研究計画に則り,新しいチオラ-ト錯体およびスルフィド錯体の合成に成功し、その幾何構造,電子状態,反応性の特異性に関する新しい知見を得た。その代表例を以下に示す。 (1)以前に我々が合成したCp^*Ta(S)_3Li_2と(C_8H_<12>)_2Rh_2Cl_2との反応から,異核混合クラスタ-Cp^*Ta(S)_3[Rh(C_8H_<12>)]_2を単離し,その構造をX線解析より決定した。また,温度可変 ^1HーNMRによってRhフラグメントが硫黄原子上で容易に移動することを初めて見いだした。分子軌道論によると,この転移反応の遷移状態でRhは3配位構造をとることが示唆された。 (2)Cp^*Ta(S)_3Li_2と(Ph_4P)_2[Fe_4S_4Cl_4],(Ph_4P)_3[Fe_3(SPh)_3],(Ph_4P)_2[Fe_2S_2Cl_2]との反応はいずれも(Cp^*TaS_3)_2Fe^<2->を生成することが明らかとなった。これらはTHF中50℃の条件下でおこなったもので,それぞれの鉄硫黄クラスタ-からFe原子が遊離したことになる。したがった、異核クラスタ-の収率は鉄硫黄クラスタ-の熱安定性に依存する。 (3)NbCl_5とLi_2(SCH_2CH_2SCH_2CH_2S)の反応ではCーS結合切断が容易におこり,Nb(SCH_2CH_2S)_2(SCH_2CH_2SCH_2CH_2S)^-(A),Nb(S)(SCH_2CH_2S)(SCH_2CH_2SCH_2CH_2S)^-(B),Nb(O)(SCH_2CH_2S)(SCH_2CH_2SCH_2CH_2S)^-(C)を与えた。構造はすべてX線解析によって決定した。例えば(A)は硫黄配位子のみからなるNb7配位の特異な構造をとっている。 (4)VCl_3とLi_2(SCH_2CH_2SCH_2CH_2S)の反応ではCーS結合切断がおこらず,[V(SCH_2CH_2SCH_2CH_2S)_2]^-錯体がLiで架橋されたポリマ-状になっており,新しい型の無機ポリマ-を生成した。 X線構造解析に用いる上記錯体群の結晶成長において,本補助金で購入したプログラム付低温槽が威力を発揮した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.Tatsumi,et al.: "Synthesis and Structure Determination of Bicyclic (Li(tmeda)2)2(S6)" Angew.Chem.102. 455-457 (1990)
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[Publications] K.Tatsumi,et al.: "A Homoleptec Uranium(Thiolate:Synthesis,Structure,Fluxional Behavior of (Li_4(dme)_4)(U(SCH_2CH_2S)_4)and Reaction with CS_2" Inorg.Chem.29. 4928-4938 (1990)
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[Publications] A.Nakamura,et al.: "Transition Metal Thiolates: Synthetic,Catalytic,and Biomimetic Aspects" Pure and Appl.Chem.62. 1011-1020 (1990)
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[Publications] K.Tatsumi: "Condensation and Commentary of “Cleavage of SO_2 on (C_5Me_5)_2ー(muーS_2)(muーS)_2 to Form S_8 and a Thiosulfate Complex"" Chemtracts(Inorganic Chemistry). 2. 134-136 (1990)
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[Publications] M.Iyoda,et al.: "Novel Tetranuclear Iron Hexapentaene Complexes:The First Examples of piーAllyl Chain System" Angew.Chem.103. (1991)
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[Publications] N.Kitajima,et al.: "A Model for Oxyhemocyanin,Synthesis and Structure of Binuclear Copper(II) Complex,(Cu(HB(3,5ーR_2pz)_3))_2(O_2)" J.Am.Chem.Soc.113.