1990 Fiscal Year Annual Research Report
クラスタ-理論に基づく高分子溶液の構造に関する研究
Project/Area Number |
02650644
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
佐伯 進 福井大学, 工学部, 助教授 (10143934)
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Keywords | 高分子溶液 / 気一液平衡 / 活量係数 / クラスタ-関数 / 化学ポテンシャル / FloryーHuggins理論 / KirkwoodーBuffーZimm理論 / 濃度ゆらぎ |
Research Abstract |
ポリスチレンーシクロペンタン二成分系の気ー液平衡測定を、上限臨界共溶温度(UCST)及び下限臨界共溶温度(LCST)にわたる温度範囲で測定し、活量係数の濃度及び温度依存性のデ-タから、KirkwoodーBuffーZimmの理論式をもとに、溶媒のクラスタ-関数G_<00/v0>の温度依存性を決定した。G_<00/v0>の値は、温度が50℃から140℃へ上昇するにつれ30から0へと単調に減少した。現在、このG_<00/v0>の結果の再現性、信頼性を実験手法の点から検討している。一方クラスタ-理論とFloryーHuggins理論との相関性についての理論計算も行なっている。その結果、FloryーHuggins理論において、高分子セグメントの数をnN_1、溶媒の数をN_0し、全格子数NをN=a(nN_1+N_0)、a>1.0とし計算すると、溶媒の化学ポテンシァルの式は、クラスタ-理論から導かれる式と一致することを見い出した。ここではN_1は高分子の数、nはセグメント数/高分子である。格子モデルの計算機シュミレ-ションもおこない、クラスタ-モデルの妥当性を調べた。二次元格子上に、任意の正方形(9個の格子を含む)をとり、そのなかに常に一定比の白(溶媒)と黒(高分子セグメント)が含まれるようにする。この正方形内の溶媒の濃度を、ミクロな濃度と定義する。一方、任意の格子のまわりに同心円をかき、その円内の溶媒の濃度をマクロな濃度とする。マクロな溶媒濃度は、格子数の増大とともに、一定値(=ミクロな濃度)に近ずくが、格子数が少ないところでミクロな濃度から外れる領域もみいだされた。これは、溶液の濃度がどの点でも同じでも、ある分子のまわりの同心円内の濃度は、必ずしも一定ではなく、濃度ゆらぎ(クラスタ-化)があることをしめしている。今後の計画として、気ー液平衡実験の信頼性のある実験方法の確立とそのデ-タの理論的解析をもとに、理論面での発展も目指す予定である。
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Research Products
(1 results)