1990 Fiscal Year Annual Research Report
錯体形成に及ぼす高分子と界面活性剤の影響の分配理論による解析と検証研究
Project/Area Number |
02650646
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
石渡 勉 信州大学, 繊維学部, 助教授 (50126661)
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Keywords | 会合定数 / 分配係数 / 高分子 / ベシクル / 重合 / 界面活性剤 / メチルビオロ-ゲン |
Research Abstract |
種々のアルキルビオロ-ゲン(RV)とインド-ルブチレ-ト(IB)との間での会合定数Kは、添加ポリスチレンスルホン酸カリウム塩(KPSS)の濃度を上昇させると、一度低下した後上昇する。即ち、極小値が出現する。この結果は、錯体構成成分の一方が高分子に吸着され、また生成錯体も中程度吸着される場合に対応することが石渡の理論によって示されている。分配係数を用いたこの石渡の理論をこの曲線に適用し解析した結果、分配係数QV値は、MV、PrV、BV、AV、HVで、それぞれ2740、2010、2500、3350、4050となった。一方、今回の科研費で購入したフラクションコレクタ-、可視紫外分光検出器にセファデックスGPCカラムを組み合わせて直接測定したQV値は、それぞれ614、1226、2385、2185、3656となった。GPC法では若干のNaClを溶離液に加えているためにQV値が若干小さ目に出たものと考えられるが、全体的な大きさの順序やオ-ダ-はよく一致している。従って、当理論の妥当性がよく証明されたと言える。一方、界面活性剤分子集合体の一種であるベシクル(リポソ-ム)のKに及ぼす影響についても検討をおこなっている。上記錯体形成系に重合性のカチオン性ベシクルを加えた場合にも、KPSSを加えた場合と同様な傾向(Kに極小値が出現)が観察された。この界面活性剤を重合すると、その極小値の位置がずれることがわかった。この結果を上記理論を用いて解析すると、意外なことがわかった。即ち、比較的短いアルキル基を有する界面活性剤の場合には、重合によって、分配係数が増大するのに対し、中程度の鎖長の界面活性剤の場合には、重合によって、QV値が減少することがわかった。このように、界面活性剤の鎖長やそれらの重合が錯体成分及び生成物の分配係数に微妙な影響を与えていることがわかった。現在、これらの新たな結果を更に再び、GPC法を用いて解析検討を続けているところである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 篠原 敬一: "重合性界面活性剤分子集合体の種々の反応への影響" 高分子学会予稿集. 39. 422-422 (1990)
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[Publications] 篠原 敬一: "重合性界面活性剤ベシクル内基質の膜透過・反応の重合による制御と添加ポリマ-の影響" 高分子学会予稿集. 40. (1991)
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[Publications] 酒井 渉: "重合性界面活性剤分子集合体(ベシクル・ミセル)の触媒効果" 高分子学会予稿集. 40. (1991)