1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660050
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村上 陽三 九州大学, 農学部, 教授 (20038178)
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Keywords | クリタマバチ / チュウゴクオナガコバチ / 放飼実験 / 定着寄生蜂の性比 / 隨意的高次寄生者 |
Research Abstract |
クリタマバチの生物的防除因子としての有効性を明らかにするため、中国河北省から輸入されたチュウゴクオナガコバチの放飼実験が1982年茨城県つくば市と熊本県大津町のクリ園で行われた。茨城県では1986年以降90%前後の高い寄生率に達してクリタマバチを激減させたが、熊本県では寄生率は低く有効に働いていない。その原因を明らかにするための調査を行った結果、熊本県の放飼園に定着したチュウゴクオナガコバチの低い雌比と、隨意的高次寄生者によるチュウゴクオナガコバチの幼虫期の死亡が重要であると結論された。 中国河北省で採集されたクリタマバチ虫えいからの本種の羽化雌比は54〜63%であったが、熊本県の定着個体群では1989年まで17%と著しく低かった。しかし1990年には35%に上昇し、寄生率も1989年までの1%前後から1990年には4.5%へと急増した。他方隨意的高次寄生者の作用に関しては、虫えいの解剖調査と虫えいからの羽化調査によって、6月から10月までの間に、チュウゴクオナガコバチの幼虫が数種の隨意的高次寄生者の寄生によって、80%前後死亡することが明らかとなった。とくにクリタマヒメナガコバチと未同定のヒメナガコバチの一種による寄生が重要な死亡要因であると判断された。 しかしこれらの隨意的高次寄生者は、茨城県の放飼園でも放飼以前に検出されたが、現在は問題ないので、熊本県の放飼園での天敵複合体の推移とクリタマバチの密度調査を引続き継続する必要がある。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 村上 陽三: "九州におけるチュウゴクオナガコバチの放飼と定着" 植物防疫. 44. 419-422 (1990)
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[Publications] 村上 陽三・行徳 裕: "クリタマバチ輸入天敵チュウゴクオナガコバチの放飼実験(5)二次寄生蜂によるTorymus spp.の死亡" 九州病害虫研究会報. 37. (1991)
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[Publications] 桐谷 圭治・志賀 正和編(ほか15名著): "天敵の生態学(第II部ー4のうち「クリタマバチの導入天敵と害虫管理」分担" 東海大学出版会, 166 (1990)