1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660287
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仁木 良哉 北海道大学, 農学部, 教授 (90001437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
引地 邦男 北海道大学, 理学部, 教授 (30000805)
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Keywords | レンネットゲル / カゼインミセル / カゼインサブミセル / 水 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
チ-ズの製造において、凝乳酵素による牛乳のゲル化(カ-ドの形成)およびクッキングでの水分のコントロ-ルはチ-ズの収量や品質に直接関係することから極めて重要である。本研究はレンネットゲル形成時における水の動きを分子レベルで追究するため核磁気共鳴(NMR)測定法を利用した。結果:超遠心法により牛乳からカゼインミセルを分離し、さらに、人工乳清に再懸濁し、カゼインミセル液を調製した。まず、凝乳酵素レンネットを加えて、ゲルを形成し、低周波型ゲル強度測定装置でゲル形成の条件、ゲルの固さなどについて検討した。一方、 ^1HーNMRで水のスピンースピン緩和時間T_2を測定することにより、カゼインミセル液とカゼインサブミセル液での緩和速度について検討した。まず、水がカゼインミセル表面にあるサブミセルにだけ結合している、すなわち速い速度で自由な水と交換しうる水がミセル表面にのみ存在すると仮定すると、ミセルの水の結合部位の数はサブミセルの表面積比(10^2)に比例することになり、一方、水がミセルを構成している全てのサブミセルに結合していると仮定すると、ミセルの水の結合部位の数はミセルとサブミセルの質量比(10^2)に比例することになる。実測されたミセル液とサブミセル液の水の緩和時間の比は10の二乗のオ-ダ-であり、ミセルと結合し、しかも、速い速度で自由な水と交換しうる水はミセル全体でなくミセルの表面にあるサブミセルにあると推定される。勿論、カゼインミセルの内部には閉じ込められていて、非常に遅い速度で自由な水と交換している水の存在の可能性もある。さらに、カゼインミセル液のレンネットによるゾル-ゲル転移に伴う水の緩和速度についても検討した。実験の結果、ゲル化に伴う ^1Hの緩和時間には変化がなく、カゼインミセル溶液中の水はレンネットによりゲルしても微視的な状態には変化がないと考えられる。
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