Research Abstract |
阻害性GTP結合(Gi)蛋白質の質的変動を,in vitroの実験系にて観察するため,百日咳毒素によるADPリボシル化反応,Birnbanmerらの方法に従ったGi蛋白質α,β,γサブユニット三量体の解離実験,Gi蛋白質に対する抗体を用いたWestern blot法などを行なった。昨年度に報告したが,リテウム・イオン添加は,ヒト血小板膜Gi蛋白質のADPリボシル化反応(百日咳毒素(IAP)による)量を減少させ,Gi蛋白質を介するアデニレ-ト・シクラ-ゼ活性阻害を減弱させたが,Mg^<21>GTP_2SによるGi蛋白質三量体の解離には影響せず,そのサブユニット三量体の解離の変化を伴わない質的変動を引き起こした。また,同イオンの慢性抜与患者血小板では,IAPによるADPリボシル化量は減少した。次に,リン酸化の影響を得た。ラット脳より部分精〓したGi蛋白質を,cyclic AMP依存性プロテインキナ-ゼ(Mg^<2+>ATP存在下)と反応させ,同蛋白質α,βサブユニットにリン酸化を生じせしめた後,IAPによるADPリボシル化量の減少,Mg^<2+>GPT_2SによるGi蛋白質三量体の解離促進の抑制が観察された。また,同条件下にて,Gi蛋白質を介するフォスフォリパ-がC活性刺激が抑制された。このように,Gi蛋白質のcyclic AMP依存性プロテインキナ-ゼによるリン酸化は、同蛋白質の三量体の解離の変化を伴なう質的変動を引き起こした。上述した全実験下において,Gi蛋白に対する抗体を用いたWestern blot法では,変化は観られなかった。以上の通り,G蛋白質の質的変動を惹起する因子として,プロテインキナ-ゼによるリン酸化,リチウムイオンが考えられたが,最近,次々は発見される情報伝達に関与する機能を持つ蛋白貭分子が推測され,生体膜を介する情報伝達調節の一つのメカニズムとして,G蛋白質の質的変動は重要であると考えられた。
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