Research Abstract |
平成3年度の研究計画は次の2項目であった。(1)ヒトスジシマカ,トウゴウヤブカの諸系統のフィラリアBrugia pahangiに対する感受性調査,(2)2種のヤブカの諸系統から非感受性系統(ヒトスジシマカの場合には感受性系統)を選択によって作ること。(1)の目的は大概成功し,次のような結果を得た。方法として,B・pahangiの感染したスナネズミから吸血した雌を11±1日後に解剖して,ファラリア幼虫の数を検出した。各系統について,20匹以上を解剖し,その感染率(%)を算出した。(A)ヒトスジシマカ9系統(仙台,大洗,東京,対馬,沖縄,東南アジア3系統,突然変異1系統)を調べたが,全系統共に感受性は皆無であった。従って,ヒトスジシマカはB.pahangiの媒介能は0と考えられる。(B)トウゴウヤブカについては次の9系統[()内はその感受性を示す]を調べた。宗谷(北海道,10年間累代飼育した系統,92),宮古(岩手,82),男鹿(秋田,47),佐渡(60),対馬(長崎,33),カナダ(約10年間飼育した系統,46),タイ(50),突然変異系統(60,72)であった。以上のように系統間で感受性の変異がみられた。計画(2)の結果は次の通りであった。ヒトスジシマカについては感受性系統を作ることが不可能であったので,トウゴウヤブカについてだけ選別実験を行った。トウゴウヤブフの感受性への選別は効率が良く,80〜90%の感受性を示した系統があった。それに対して,非感受性への選別と効率が悪く,こゝにその例を記す。宮古系統では一世代で82%から41%に低下し,男鹿系統では一世代で47%→29%に変動し,佐渡系統では一世代で60%→21%に低下した。しかし,他の3系統では5〜6世代の選別も効果は皆無であった。さらに宮古,男鹿,佐渡,対馬系統の非感受性への選別を継続している。
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